決済CLS決済プロセスと特徴

1.CLS決済プロセス

(1)CLS決済の流れ

① ペイインと決済は、営業日7:00(CET)にスタートし、全ての決済は9:00迄に完了する。
払い込みが必要な負けポジション通貨については5時間(アジア、オセアニア通貨については3時間)の共通時間帯で1時間毎に必要払い込み金額が決済メンバーに通知される。
メンバーはこれに従って、指定された時間帯に必要な通貨の払い込みを行う。

② CLS銀行では、各決済メンバーの支払指図を決済処理の為のキュー(待ち行列)内に待機させておき、決済メンバー毎に全体としての口座残高(総合残高)がプラスであるなどの条件に基付いて、個別の支払指図を処理していく。
決済プロセスは、新たな資金の受取りを織り込んで、数分毎に繰り返され連続的に行われる。

③ 通貨毎の「サブ口座」のレベルでは、一定限度内で日中赤残が許容される。
つまりいくつかのサブ口座残高は、決済プロセスが終了する迄の間、マイナスとなることが出来、その範囲内で支払指図が処理される。

④ CLS銀行は、決済メンバー口座間でPVP決済を実行する。
具体的には一つの外為取引における売渡通貨と買入通貨のペアの支払いを同時に実行する。
これにより二通貨の支払いの間のタイムラグを無くし、外為決済リスク発生防止に寄与している。

(2)円/ドル決済事例

① A行では日本銀行にあるCLS口座に必要な円資金の払い込み(ペイイン)を行う。
これによりCLS銀行におけるA行の円口座に同額の円が振り込まれる。

② 同様にB行ではニューヨーク連銀にあるCLS口座にドル資金のペイインを行い、CLS銀行におけるB行のドル口座に同額のドルが振り込まれる。

③ CLS銀行では、自行内におけるA行の円口座からB行の円口座への円の支払いと、B行のドル口座からA行のドル口座へのドルの支払いを同時に履行する。
これによりPVP決済が行われ、元本リスクが発生しない形で決済が完了する。

④ 決済終了後、CLS銀行では日本銀行においてCLS口座からB行口座への円の払出し(ペイアウト)を行う。

⑤ 同様にCLS銀行では、ニューヨーク連銀においてCLS口座からA行口座へのドルのペイアウトを行う。

⑥ 以上のプロセスにより、最終的にA行はニューヨーク連銀でドル資金を受け取り、B行は日本銀行で円資金を受け取ることが出来たことになる。

尚、上記例は取引が一件だけの事例だが、複数取引の際のペイインペイアウトは、受払いの差額であるネット金額で行われる。

2.CLS決済の特徴

CLS銀行における決済の仕組みが複雑なのは

① 決済資金の払込みと決済実行プロセスが別々に行われる

② 払込みがネットベースで行われるのに対し、決済は一件毎にグロスベースで行われる

③ 払い込んだ資金だけでなく、赤残を使い決済が行われる

という三つの特徴によるものである。以下に詳細を記す。

(1)ファンディングとセトルメントのプロセス分離

決済メンバーによる決済資金の払込み・払出しのプロセスである「ファンディング」は、5時間 (7:00~12:00)に渡り行われるのに対し、決済プロセスである「セトルメント」は2時間(7:00~9:00)で行われる。
つまり決済メンバーが決済資金の払込みを完了する前に、全ての決済が完了する。
この様にファンディング(払込み・払出し)プロセスとセトルメント(決済)プロセスが分離していることが、CLS決済第一の特徴と言える。

(2)ネットでの払込みとグロスでの決済

ペイインは算出されたネットポジションを元に、必要払込額を時間毎に分割した払込みスケジュールに基付き行われる。
つまりペイインは、当日の全ての支払いと受取りを通貨毎に差し引きした「ネットベース」(multilateral netting)で行われる。

一方決済プロセスでは、一つの外為取引に関する二通貨の支払いが同時に行われる(例えば円/ドル取引であれば、円支払いとドル支払いが、関連する決済メンバーのCLS口座の引落としと入金により同時に履行される)。
つまり決済は、外為取引一件毎に受払いの差し引きを行わない「グロスベース」で行われる。

この様に決済資金払込みをネットベース(net funding)で行った上で、決済は1件毎にグロスベースで行う仕組み(gross settlement)となっている点が第二の特徴である。

(3)日中赤残を使った決済

ある通貨の決済指図を処理する為に、決済メンバーの当該通貨のサブ口座に十分な残高が無い場合でも、赤残が許容範囲内であれば、口座残高を一時的にマイナスにする形で決済を実行する点が第三の特徴である。
この日中赤残利用が、上記の様なファンディングとセトルメントの分離を可能にしている。

3.CLS決済のファイナリティ

(1)中央銀行における資金移動のファイナリティ

決済メンバーは通貨発行国の中央銀行におけるCLS口座に払込みを行い、又CLS銀行は、決済完了後には中央銀行における決済メンバー口座に対し、資金払出しを行う。これらの資金移動は、中央銀行における預金口座資金である「中央銀行マネー」を使い行われる為、資金振替処理が行われた時点で、即時の「ファイナリティ」(決済完了性)を有する。

(2)CLS銀行におけるPVP決済のファイナリティ

一方CLS銀行における決済メンバー口座間でのPVP決済についても、口座間で資金振替が行われた時点で、ファイナルで取消不能となるとされている。このファイナリティについては

① CLS銀行と決済メンバー間で締結される共通契約書

② 適用される法律(英国法、ニューヨーク州法(ダブル準拠法))

により確保されている。