法務「金融商品取引業」の概念 その3

「金融商品取引業」からの除外行為

(1)概要

金商法では、幅広い金融商品、取引について包括的、横断的な投資者保護の枠組みを整備し、従前の縦割り業法を見直して、規制の簡素化を図る観点から、業について、「金融商品取引業」と定義され(法2条8項)、金商法の規制対象となる行為が包括的に掲げられている。
一方こうした定義のもとでは、規制対象行為とせずとも必ずしも投資者保護の為、支障が生ずる事が無いと認められる行為も、形式的に金融商品取引業に含まれる事が有り得る
そこで、金商法2条8項柱書に基付く政令、内閣府令において、「その内容等を勘案し、投資者保護の為支障を生ずる事が無いと認められるもの」が「金融商品取引業」の定義から明示的に除外されている(令1条の8の6、定義府令15、16条)。
この様に金商法のもとでは、形式的に「金融商品取引業」の定義に該当する行為について、規制を適用除外するにあたり、法令において明示的な例外規定を設けており、規制の明確性、予測可能性が高められている。

(2)除外規定の運用のあり方

実務的には、形式的に「金融商品取引業」の定義に該当する行為であっても、実質的に投資者保護の為支障を来たす事が無いと判断される行為が生じる。
この場合条文の文言の枠内で、合理的、実質的解釈が可能な場合は、「金融商品取引業」に該当しないと判断出来る。
一方、条文の文言の枠を超える疑いがある様な実質的解釈をとってはならない。
この様な場合は、金融庁が実務界の意見を聴くなどして、機動的に「金融商品取引業」からの除外規定を整備する事が重要である。
この様な機動的対応を可能とする観点から、政令更には政令に基付く内閣府令において除外規定が整備されている点に留意すべきである。

(3)「金融商品取引業」からの除外行為についての金商法適用関係

「金融商品取引業」の定義から除外されている行為に対する金商法の規定適用の有無については、各規定の趣旨などに照らして判断されるべきである。
当該行為は、基本的には業規制や行為規制(契約締結前、締結時の書面交付義務、運用報告書の作成、交付義務など)の直接の適用対象とならず、帳簿書類の作成、保存義務の直接の適用対象ともならない。
例えば、金融商品取引業から除外されている所謂プロ顧客を相手方とする非有価証券関連の店頭デリバティブ取引等(令1条の8の6第1項2号)については、外務員登録の必要は無い。
又、「金融商品取引業」の定義からの除外行為については、その規定上、行為の主体が限定 されているものなどもあり、この場合、当該主体による行為のみが除外される事から、金融商品取引業者がその全てを行う事が一律に可能とは言えぬが、個別規定要件を満たす業務を行う場合は、基本的に金融商品取引業者(第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う者)の「不随業務」(法35条1項柱書)として行え、兼業の届出(同条3項)、兼業の承認(同条4項)を経ずして、当該行為を成す事が出来る。
但し、当該業務についても金商法51条の一般的な監督規定が適用されると考えられるので、同条にある業務改善命令などの対象となり得る(法52条1項6号参照)。
尚、銀行などが「金融商品取引業」の定義から除外されている行為を行う場合でも、除外の主体に金融機関が含まれていない行為を除き、登録金融機関の登録(法33条の2)は不要である。

(4)「金融商品取引業」からの個別除外行為

「金融商品取引業」の定義から個別に除外されている行為は、下図表に記した行為であるが、整理すると、

  1. 「金融商品取引業」該当行為全般(法2条8項各号)からの除外行為(図表①)
  2. 有価証券売買(同項1号)、有価証券売買などの媒介、取次ぎ、代理(同項2号)からの除外行為(図表④)
  3. 外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ、代理(同項2、3号)からの除外行為(図表⑤)
  4. 有価証券売買などの媒介、取次ぎ、代理(同項2~4号)からの除外行為(図表⑥)
  5. 店頭デリバティブ取引(同項4号)からの除外行為(図表②⑦⑧)
  6. 有価証券引受け(同項6号)からの除外行為(図表⑨~⑫)
  7. 投資一任運用行為(同項12号)からの除外行為(図表⑬⑭)
  8. 外国投資信託運用行為(同項14号)からの除外行為(図表⑮)
  9. ファンド自己運用行為(同項15号)からの除外行為(図表③⑯~⑲)
  10. 金銭、有価証券の預託を受ける行為(同項16号)からの除外行為(図表⑳㉑)
  11. 社債等振替行為(同項17号)からの除外行為(図表㉒㉓)
「金融商品取引業」から除外されている行為
① 国・地方公共団体・日本銀行・外国政府・外国地方公共団体・外国中央銀行の行為(令1条の8の6第1項第1号)。

② 金融商品取引業者等、適格機関投資家や資本金10億円以上の株式会社などのプロ顧客を相手方とする非有価証券関連の店頭デリバティブ取引またはその媒介・取次ぎ・代理(電子店頭デリバティブ取引等業務を除く)(令1条の8の6第1項第2号、定義府令15条)[平成27年9月改正]。

③ 二層型商品ファンドスキームにおける1の法人への全部出資にかかる投資運用行為(令1条の8の6第1項第3号)。

④ 勧誘をすることなく金融商品取引業者等の代理・媒介により行う信託受益権の販売(業務委託契約書などにおいて勧誘の全部を委託する旨が明らかにされているものに限る)(令1条の8の6第1項第4号、定義府令16条1項1号)。

⑤ 外国において非有価証券関連の外国市場デリバティブ取引等を業として行う者が外国から金融商品取引業者などを相手方としてまたは勧誘することなくプロ顧客を相手方として行う非有価証券関連の外国市場デリバティブ取引等(同条1項1号の2)[平成23年4月追加]。

⑥ 投資運用業登録業者がグループ外国投資運用業者(「関係外国運用業者」)の委託を受けて行う取引の委託の媒介・取次ぎ・代理(同項2号・2項)[平成20年12月改正]。

⑦ 物品の売買等を業とする者がその取引に付随して事業者の為替リスクをヘッジする目的で当該事業者を相手方として行う店頭通貨デリバティブ取引(先渡取引・オプション取引)(同条1項3号)。

⑧ 内部統制報告書の提出義務を負う上場会社等がその子会社の為替リスクをヘッジする目的で子会社を相手方としてまたは子会社のために行う店頭通貨デリバティブ取引(先渡取引・オプション取引)またはその媒介・取次ぎ・代理(同項4号)。

⑨ 金融商品取引業者(資本金等5000万円以上の第二種金融商品取引業を行う法人に限る)がリース事業を行う完全子会社(株式会社)から匿名組合契約に基づく権利を引き受ける行為(特定引受行為)(同項5号)。

⑩ 金融商品取引業者(第二種金融商品取引業を行う法人に限る)がいわゆる不動産私募ファンド(いわゆる子ファンドに相当)の匿名組合出資持分を、他の1の匿名組合営業者(いわゆる親ファンドに相当)に取得させることを目的として、引き受ける行為(同項6号)。

⑪ 運用型信託会社・外国信託会社が自ら受託した信託にかかる信託受益権の募集・私募に際して当該信託受益権を引き受ける行為(同項7号)。

⑫ 日本版ESOP(従業員株式所有計画)と呼ばれる持株会(組合型・信託型)による買付けが行われることを目的として株券を取得する行為(同項7号の2)[平成21年9月追加]。

⑬ グループ外国業者(「関係外国金融商品取引業者」)のために行う投資一任契約にかかる行為(いわゆるオフショア・ブッキング)(同項8号・3項)。

⑭ 商品投資顧問業者等が商品投資に付随して為替リスクをヘッジする目的で行う「通貨デリバティブ取引」への投資運用を行う投資一任契約にかかる行為(同条1項9号・4項)。

⑮ 外国法令に基づいて外国において外国投資信託にかかる投資運用業を行う行為(同条1項9号の2)[平成23年4月追加]。

⑯ 集団投資スキームのうち投資一任契約により運用権限の全部を投資運用業登録業者に委託して所要の届出などをしている場合における自己運用行為(同項10号)。

⑰ 集団投資スキームのうちいわゆる二層構造不動産ファンド(子ファンド)で親ファンド運営者(匿名組合営業者であって投資運用業登録業者、特例業務届出または平成18年証取法等改正法附則48条1項の特例投資運用業務を行う者が所要の届出などをしている場合における自己運用行為(同項11号)。

⑱ 競争用馬ファンドスキームにおける自己運用行為(同項12号、金商業等府令7条4号ニ)。

⑲ 外国集団投資スキームのうち、出資者(直接出資者・間接出資者)が合計10名未満の適格機関投資家および特例業務届出者に限られ、かつ、これらの者の出資額が当該外国集団スキームの総出資額の3分の1以下である場合における自己運用行為(同項13号)。

⑳ 金融商品取引業者(資本金など5000万円以上の第二種金融商品取引業を行う法人に限る)が信託受益権・集団投資スキーム持分にかかる募集・私募の取扱いに関して顧客から金銭の預託を受ける行為であって、当該金銭について分別管理をしているもの(特定有価証券等管理行為)(同項14号)。

㉑ 金融商品取引業者(上記⑳)が電子申込型電子募集取扱業務等に関して顧客から金銭の預託を受ける行為であって、信託の方法により、当該金銭と自己の固有財産とを分別して管理する方法(特定有価証券等管理行為(定義府令16条1項14号の2))[平成27年5月追加]

㉒ 外国口座管理機関が行う社債等の振替(同項15号)。

㉓ 投資信託受益権の直販を行う金融商品取引業者が分別管理を行う場合における当該投資信託受益権の振替(同項16号)[平成20年1月追加]。