法務「金融商品取引業」の概念 その2

「金融商品取引業」に該当する行為②

(7)一定の有価証券募集、私募

一定の有価証券募集、私募が「金融商品取引業」の該当行為とされている(法2条8項7号)。
これは、有価証券発行者自身が行う行為(法2条3項)を金融商品取引業とするものである。「金融書品取引業」に該当する「募集、私募」の対象となる有価証券の種類としては、投資者保護の必要性と発行者の資金調達の便宜を考慮し

① 委託者指図型投資信託の受益証券
② 外国投資信託の受益証券
③ 抵当証券
④ 外国抵当証券
⑤ ①②の有価証券に表示されるべき権利であり、有価証券とみなされるもの(③④に表示されるべき権利については、内閣府令で定められていない)
⑥ 集団投資スキーム持分、外国集団投資スキーム持分
⑦ 信託型商品ファンド持分

に限定されている(同号イ~ト、令1条の9の2)。
委託者指図型投資信託の受益証券の発行者は委託者(投資信託委託会社)である(投信法2条7項、11項)から、上記①②は、所謂投資信託の直販を金融商品取引業するものである。
上記⑥は、ファンド持分については商品組成と販売、勧誘が一体化して行われる事が多い事などを勘案して対象とされているものである。
一方、信託受益権などの信託スキームを利用した自己募集、私募は、上記⑦の通り信託型商品ファンドの受益権に限り、金融商品取引業とされている。又、株券、新株予約権証券や社債権などの自己募集、私募は、会社の資金調達を阻害しない様にする観点から、
金融商品取引業とされていない。但し、投資者保護を図る為に必要な場合は、政府で有価証券を追加できる(法2条8項7号ト)。
募集、私募は「取得勧誘」を内容とする(法2条3項柱書)。
「勧誘」とは、他人に対しある行為をする様勧める事実行為をいうが、その概念は必ずしも明確でなく、開示規制では、文書の頒布、説明会における説明や広告の様な情報提供行為も「勧誘」概念に該当すると整理されている(企業開示ガイドラインB4-1)が、業規制ではこれよりも限定的に解する必要がある。

(8)有価証券の売出し、特定投資家向け売付け勧誘等

有価証券売出し、特定投資家向け売付け勧誘等が「金融商品取引業」の該当行為とされている(法2条8項8号)。
「有価証券売出し」は、既に発行された有価証券売付け申込み又はその買付け申込みの勧誘(取得勧誘類似行為などに該当するものを除く。
「売付け勧誘等」という)の内、一定の要件に該当するものをいう(法2条4項)。
一定の有価証券の取引にかかる売付け勧誘等が除外されている(同項、令1条7の3)。
「特定投資家向け売付け勧誘等」は、第一項有価証券にかかる売付け勧誘等であり、特定投資家のみを相手方として行う場合であり、一定の要件に該当するもの(有価証券売出しから除外される取引を除く)をいう(法2条6項柱書、令1条の7の3)。
当該要件は

① 売付け勧誘等の相手方が、国、日銀、適格機関投資家以外の者である場合は、金融商品取引業者等が顧客からの委託により、又は自己の為に当該売付け勧誘等を行う事
② 当該有価証券がその取得者から「特定投資家等」以外の者に譲渡されるおそれがない事

である(法2条4項2号ロ、令1条の8の2)。
平成20年金商法改正により、「特定投資家向け売付け勧誘等」(特定投資家売出し)が「有価証券売出し」の定義から除外された(法2条4項2号ロ)事に伴い、金融商品取引業の定義において、有価証券売出し及びその取扱いに加え、特定投資家向け売付け勧誘等及びその取扱いが追加されたものである(同条8項8、9号)。
金融商品取引業者が買取引受を行った有価証券(買取時点で既発行の有価証券となる)を分売する行為は、形式的には「売出し」の定義に該当するが、新規発行有価証券の分売の過程における行為であるとの実態に着目し、「売出し」ではなく「募集」であると解されている。

(9)有価証券売出し、募集の取り扱い又は、私募、特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い

有価証券売出し、募集の取扱い又は私募、特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いが、「金融商品取引業」の該当行為とされている(法2条8項9号)。
「取扱い」とは、有価証券発行者などの他人の為に、有価証券売出し、募集、私募、特定投資家向け売付け勧誘等を代行する行為と解されており、「勧誘」を伴わない単なる情報提供は、基本的に「取扱い」に該当しない。
例えば金融商品取引業者や登録金融機関による投資信託窓口販売は、投資信託受益証券の募集の取扱いに該当する。
販売業者は、「投資信託契約」(投信法3条1項)の当事者ではなく、販売業者と投資信託委託会社との関係は、募集、販売委託契約、そして販売業者と投資者との間の関係は投資信託総合取引規定に基付く契約により、それぞれ定められる(最判平成18年12月14日民集60巻10号3914頁)。
又、金融商品取引業者等による合同運用金銭信託(元本保証型を除く)窓口販売は、「信託契約代理業」ではなく、募集、私募の取扱いに該当する(信託業法2条8項参照)。
この場合、金融商品取引業者等は、金商法の行為規制の適用を受け、受託者は信託業法の行為規制(特定信託契約)の場合は準用金商法を含む)の適用を受ける(同法24条の2、兼営法2条の2参照)。
これに対し、元本保証型窓口販売は、金商法が適用されず、信託契約代理業に該当する(定義府令14条4項1号イ(平成26年4月改正)参照)。
更に金融機関のシンジゲートローンにおいて、「担保権の信託」(セキュリティトラスト)が用いられる場合、参加金融機関は当該信託の受益者として、信託受益権を有する事となり、アレンジャーの行為は、
形式的には当該信託受益権の私募の取扱いに当たる。但し、信託受益権とローンの不可分一体性が確保されている場合は、第二種金融商品取引業に該当しないと解されている。
本号の行為は金融商品仲介行為に該当する(法2条11項3号、66条の11柱書)。

(10)PTS(私設取引システム)

a.概要

有価証券売買又はその媒介、取次ぎ、代理であり、電子情報処理組織を用いて、同時に多数 の者を一方の当事者又は各当事者として、一定の売買価格の決定方法、又はこれに類似する方法により行うものが「金融商品取引業」の該当行為とされている(法2条8項10号)。
所謂「PTS(Proprietary Trading System)」私設取引システム行為である。上場有価証券取引の取引所集中義務撤廃(平成10年12月1日実施)に伴い、米国などにおいて普及していたPTS(伝統的取引所とは異なる私的組織が電子的技術を活用し、取引サービスを提供する電子取引システム)開設が見込まれた。
PTSは市場間競争を促進し、投資者の利便性向上に資する事が期待された。
そして平成10年証取法改正(金融システム改革法)により、PTSにおける取引の公正性が確保出来る様法的枠組みを整備する観点から、PTSが「証券業」(金商法では金融商品取引業)に該当する行為として位置付けられたものである。
尚、最近の米国では「ATS(AlternativeTrading System)」(代替取引システム)、EUでは「MTF(Multirateral Trading Facility)」(多角的取引基盤)と呼ばれている。
PTSでは、デリバティブ取引が認められておらず、又、登録所ではPTS業務認可にあたり、信用取引を取り扱わない事を求める監督指針を示している(金商業者等監督指針Ⅳ-4-2-1②)。

b.PTSの売買価格決定方法

PTS売買価格決定方法については一定の方法が定められており(法2条8項10号イ~ホ、令1条の10、定義府令17条)、これは仮にPTSが金融商品取引所と同程度の高い価格形成機能を有する場合、金融商品取引所としての免許取得が必要になる事から、業としてのPTSと金融商品取引所を区別する必要がある事による。
具体的には

① オークションの方法(有価証券売買高が、一定基準を超えない場合に限られる)
② 金融商品取引所に上場されている有価証券について、当該金融商品取引所の開設する取引所金融商品市場における当該有価証券売買価格を用いる方法(市場価格売買方法)
③ 店頭売買有価証券について、その登録を行う認可金融商品取引業協会が公表する当該有価証券売買価格を用いる方法(市場価格売買方法)
④ 顧客間の交渉に基付く価格を用いる方法(顧客間交渉売買方法)
⑤ 顧客が提示した指値が、取引相手方となる他の顧客が提示した指値と一致する場合に、当該顧客が提示した指値を用いる方法(顧客注文対当方法)
⑥ 金融商品取引業者が同一の銘柄に対し、自己又は他の金融商品取引業者等の複数の売付け、買付けの気配を提示し、当該複数の売付け、買付けの気配に基付く価格を用いる方法 (売買気配提示方法)

である。上記①は、平成16年証取法改正に、上記⑤⑥は、平成12年証取法改正にそれぞれあわせて追加された。
上記⑥からは、複数の金融商品取引業者等が、恒常的に売付け、買付けの気配を提示し、且つ当該売付け、買付けの気配に基付き売買を行う義務を買うもの(マーケットメイク売買方法)は除かれる(法2条8項10号ホ、定義府令17条2号)。
これを行う場合は、店頭売買有価証券市場で行われる場合を除き金融商品取引所としての免許を要するとする趣旨である。

c.金融商品取引所制度との関係

金融商品市場は、店頭売買有価証券市場を開設する認可金融商品取引業協会を除き、金融商品取引所としての免許を受けた者でなければ開設してはならない(法80条1項)。
PTSは有価証券売買を行う市場として金融商品市場に該当する(法2条14項)が、免許不要である(法80条2項)。
尚、金融商品市場の定義(法2条14項)には、店頭デリバティブ取引を行う市場は含まれておらず、且つPTSには店頭デリバティブ取引は含まれない事から、金融商品取引業者が多数の者を一方の当事者又は各当事者として、店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ、代理を行っても、金融商品取引所としての免許もPTS業務としての認可(法30条1項)も不要となっている。

d.PTSへの該当性

取引所金融商品市場における有価証券売買取次ぎを行い、又は他の単一の金融商品取引業者に有価証券売買取次ぎを行うシステムは、基本的にPTS及び取引所金融商品市場に該当しないと解されている。
例えば、2の顧客の同数量の売り注文、買い注文を、取引所の立会外取引に同時に取り次ぐシステムは、基本的にこれらに該当しない。但しその場合であっても、システム内で注文の集約、相殺などを行う場合は、該当する可能性があると解されている(金商業者等監督指針Ⅳ-4-2-1①)。
ダークプール(証券会社が機関投資家の注文に気配提示せず社内で付け合せるマッチングシステム)については、自己対当売買の形式で取引所の立会外取引に取り次ぐ場合は、基本的にPTSに該当しない事になる。

(11)投資助言行為

a.概要

投資顧問契約を締結し、当該投資顧問契約に基付き助言を行う事が「金融商品取引業」の該当行為とされている(法2条8項11号)。
自らが投資顧問契約の締結主体となろうとする者が、投資顧問契約の締結の勧誘を行う行為も、基本的投資助言行為に該当する。

b.「投資顧問契約」の定義

「投資顧問契約」とは、当事者の一方が相手方に対して

① 「有価証券の価値等」(有価証券の価値、有価証券関連オプションの対価の額又は有価証券指標の動向)
② 「金融商品の価値等」(金融商品の価値、オプションの対価の額又は、金融指標の動向)

の分析に基付く投資判断に関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍、その他不特定多数の者に販売する事を目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時購入可能なものを除く)その他方法により助言を行う事を約し、相手方がそれに対し報酬を支払う事を約する契約である(同号、定義府令18条)。
上記①における「有価証券関連オプション」とは、金融商品市場において、金融商品市場を開設する者が定める基準及び方法に従い行う有価証券関連のオプション取引(法28条8項3号ハ)にかかる権利、外国金融市場において行う取引であり、当該オプション取引と類似の取引にかかる権利、又は金融商品市場、外国金融商品市場によらず行う店頭オプション取引(同項4号ハ、ニ)の対価の額をいう。
「有価証券指標」とは、有価証券の価格、利率、有価証券にかかる収益その他これに準ずるものの配当率、割引の方法により発行された有価証券の割引率をいう(法2条8項11号イ、定義府令18条)。
上記②における「金融商品の価値等」の内、商品(政令指定)にかかるものは、金融商品取引市場に上場されているものに限定されている(平成24年金商法改正)。

c.「有価証券の価値等」

有価証券及び有価証券に関連するデリバティブ取引について、単に「有価証券の価値等」について助言を行う場合であっても、投資助言行為に該当する。「投資判断」は要件とされていない。
「有価証券の価値等」とは、一般的に有価証券投資により将来得られる利益、即ち値上がり益、利子、配当などの経済的価値を意味すると解される。単に景気動向、企業業績や現在、過去における有価証券の価格は該当しないが、これらの事項が黙示的に将来の経済的価値を表示したと判断される場合には該当すると解される。
所謂フィナンシャルプランナーが、顧客の投資ポートフォリオにおける資産配分を助言する行為は、個別銘柄に言及する事無く一般的なものにとどまる限りは、「有価証券の価値等」にかかるものに該当しない場合が多い。
一方例えば個別株式のアナリストリポートは、「有価証券の価値等」にかかるものに該当する。

d.「金融商品の価値等の分析に基付く投資判断」

有価証券に関連しないでデリバティブ取引について、単にその原資産である金融商品の価値や参照指標である金融指標の動向などについて助言したのみでは投資助言行為に該当せず、投資判断に関する助言を伴った場合に投資助言行為に該当する事になる。
例えば天候デリバティブに関連して、単に今年の日本の夏の平均気温(金融指標に該当)の動向について助言するのみでは、投資助言行為に該当しない。
一方アナリストは、少なくとも「金融商品の価値等の分析」を行っているものと考える(金商業等府令72条1号参照)。

e.「投資判断」

「投資判断」とは、投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数、価格、売買の別、方法、時期についての判断、又は行うべきデリバティブ取引の内容、時期についての判断をいう(法2条8項11号)。
議決権の行使についての判断自体は「投資判断」に含まれないと解される。従って議決権行使助言会社による議決権行使にかかる助言は、それのみでは基本的には投資助言行為に該当しないものと解される。

f.不特定多数の者により随時購入可能なものの除外

憲法が保障する言論、出版の自由に配慮されたものであり、店頭、インターネットなどで不特定多数の者がいつでも購入出来る状態であれば足り、定期購入か単発購入かの形式は問わず、実際に購入したものが不特定多数である必要は無いと解される。
一方、一般的に特定の会員にしか配布されない文書や不特定多数を集めて講演する事は、不特定多数の者により随時利用可能とは言い難いと解される。
株式投資の銘柄選定に用いるソフトウェア開発業者を、無登録の投資助言、代理業者と認めた行政処分事例(東海財務局平成24年12月4日)がある(金商業者等監督指針Ⅶ-3-1②イb参照)。

g.報酬

投資顧問契約は、報酬支払いを内容とする契約である事から、無報酬の場合は、投資助言行為に該当しない。報酬に該当するか否かは、実質的に判断され、手数料など名目は問わない。
証券会社が顧客の有価証券の売買の媒介、取次ぎ、代理に付随して助言を行う場合があるが、通常は当該助言に対して報酬を受けていないと認められる事から、投資助言行為に該当しないと解される(法35条1項8号参照)。
報酬を受ける場合であっても、助言相手から報酬を受けないのであれば、投資助言行為に該当しない。
例えば講習会の主催者から報酬を受けて助言を行うという様な場合である。形式的に第三者からの報酬受領であれ、実質的に助言相手からの受領と認められる場合は、この限りではない。