法務「金融商品取引業」の概念 その1

1.「金融商品取引業」と「金融商品取引業者」

(1)概要

金商法では、その目的である投資者保護及び資本市場の健全性を確保する観点から、一定の行為の何れかを業として行う事が「金融商品取引業」と定義され(法2条8項)金融商品取引業は、内閣総理大臣(財務局長等に権限委任)の登録を受けた者でなければ行う事が出来無い(法29条)。
 当該登録を受けた者が「金融商品取引業者」である(法2条9項)。

(2)経緯

金商法では、業務に関する包括的、横断的法制の構築を図る観点から、平成18年金融商品取引法制整備により、従前の

① 証取法(改正)及び外国証券業者に関する法律(外証法(廃止))に基づく「証券業」
② 投信法(改正)に基付く「投資新信託委託業」及び「投資法人資産運用業」
③ 有価証券にかかる投資顧問業の規制等に関する法律(投資顧問業法(廃止))に基付く「投資顧問業」及び「投資一任業務」
④ 金先法(廃止)に基付く「金融先物取引業」
⑤ 信託業法(改正)に基付く「信託受益権販売業」
⑥ 抵当証券業の規制等に関する法律(抵当証券業規制法(廃止))に基付く「抵当証券業」
⑦ 商品投資にかかる事業の規制に関する法律(商品ファンド法(改正))に基付く「商品投資販売業」

が、「金融商品取引業」に統合されている。
又、新たな行為が「金融商品取引業の概念に追加されている。具体的には、 所謂自己募集、私募、投資顧問契約、投資一任契約の締結の代理、媒介及び金銭、有価証券の所謂資産管理行為である。
一方、不動産特定事業法に基付く「不動産特定事業」については、同法に不動産に固有の規制が多く課されている事を勘案して、同法による規制の枠組みが維持され、金商法に統合されていない。又、銀行業や保険業、信託業についても

① 銀行法や保険業法、信託業法において免許制などのより高度な業規制が課されている事
② 投資性の無い商品(決済性預金、保障型保険、公益信託など)も規制対象とされている事
③ 所謂銀証分離の根拠となった利益相反や銀行の優越的地位の濫用の可能性

は尚重要な論点である事から金商法に統合されていない。

(3)証券会社

証取法では、証券業を営む者として登録を受けた株式会社が「証券会社」とされていたが、金商法では、証券会社の用語は用いられておらず、金融商品取引業者の内、有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者が証券会社に相当する。

2.登録金融機関

金融商品取引業の定義からは、銀行、協同組織金融機関、外国保険会社を含む保険会社、無尽会社、証券金融会社、商工組合中央金庫及び指定短資会社が行う投資運用業に該当する行為(法2条8項12、14、15号)又は有価証券関連業に該当する行為(法28条8項各号)が除かれている(法2条8項柱書、令1条の9)。
これら金融機関が当該除外行為を業として行っても「金融商品取引業」にならない。
一方、金融機関は原則として、有価商品関連業又は投資運用業を行う事を禁止される(法33条1項本文、令1条の9)。但し、一定の有価証券関連業に該当する行為については許容されており(同条2項)、当該行為を行う場合、内閣総理大臣の登録を受けねばならない(法33条の2)。
当該登録を受けた金融機関は「登録金融機関」と呼ばれる(法2条11項柱書)。登録金融機関が行う登録にかかる業務は、「登録金融機関業
務」と呼ばれる(法33条の5第1項3号)。
尚、金融機関が投資助言業務など、投資運用業及び有価証券関連業以外の「金融商品取引業」を行う場合は、金融商品取引業者としての登録を受ける事が明示的に否定されている
ものではないが、金融機関については、通常は金融商品取引業者としてではなく、登録金融機関としての登録を受ける事が想定されている。
金融機関業務は、銀行法などの他業法により規制監督されている。金商法は、登録金融機関の業務全般を規制監督をするものではなく、登録金融機関業務又はこれに不随する業務を規制監督するものである(法44条の2第2項、52条の2第1項3号参照)。

3. 「金融商品取引業者等」

金融商品取引業者又は登録金融機関を合わせて「金融商品取引業者等」という(法34条)金融商品取引業者等は、投資者や企業などの資金調達者と資本市場とを結びつける機能を担うものであり、投資者保護及び資本市場健全性確保、そして資本市場や国民経済の健全な発展に重要な役割を果たすものである。
金融庁「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会論点整理」(平成18年6月30日)は、信頼される証券市場を構築する上で、証券会社等の市場仲介機能等の適切な発揮の確保が必要であるとの考え方を示している(金商業者等監督指針Ⅳ-3-2)。

4. 「金融商品仲介業」と「金融商品仲介業者」

(1)「金融商品仲介業」

金商法では、「金融商品取引業」の内、「所属金融商品取引業者等」(第一種金融商品取引業(第一種少額電子募集取扱業務を除く)又は投資運用業(適格投資家向け投資運用業を除く)を行う金融商品取引業者又は登録金融機関)の委託を受けて、「金融商品仲
介行為」に該当する行為の何れかを当該金融商品取引業者は又は、登録金融機関の為に行う業務が「金融商品仲介業」と位置付けられている(法2条11項、29条の4の2第7項、29条の5第5項、66条の2第1項4号、66条の11柱書)。

(2)金融商品仲介行為

「金融商品仲介行為」は

① 有価証券売買の媒介(PTS(私設取引システム)行為を除く)
② 取引所金融商品市場における有価証券売買、デリバティブ取引及び外国金融市場における有価証券売買、外国市場デリバティブ取引の委託の媒介
③ 有価証券の募集、売出し、私募、特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い
④ 投資顧問契約、投資一任契約の締結の媒介

である(法2条11項各号、66条の11柱書)。
「金融商品仲介業務」は、金融商品仲介行為を行う業務である(金商業等府令1条4項13号)。
金融商品仲介業務には、証券取引口座開設の勧誘業務が含まれると解される。

(3)「金融商品仲介業者」

内閣総理大臣の当該登録を受けた者は、「金融商品仲介業者」と呼ばれる(法2条12項)。
金融商品取引業者としての登録制度よりも登録要件の簡易な登録制度となっている(法66条、66条の4)。
金融機関は、金融商品仲介業者としてではなく、登録金融機関業務として金融商品仲介業務を行う事が出来る(法33条2項3号ハ、4号ロ、33条の2柱書、2号)。
「委託金融商品取引業者」は、登録金融機関が金融商品仲介業務の委託を受ける第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者である(金商業等府令44条6号)。
一方、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者は、基本的には金融商品仲介業に該当する何れの業務をも行い得る事から、金融商品仲介業を認める必要性に乏しく、又金融商品取引業者として行う業務と金融商品仲介業者として行う業務との誤認を避ける必要がある事から、金融商品仲介業者となる事は出来無い(法66条、66条の4第16号、66条の19第2号)。

(4)金融商品仲介業制度の趣旨と特徴

金融商品仲介業制度は、平成15年証取法改正により創設された「証券仲介業」制度が、平成18年証取法改正により拡充されたもので、多様な投資者の幅広い市場参加を促進する観点から、金融商品取引業者等の販売チャネルの拡充を図り、それを通じて顧客の金融商品取引業者等へのアクセスの容易化と、競走を通じたサービスの多様化が期待されている。金融商品の製販分離(金融商品の製造業と金融サービス提供業の機能分化)の促進という理念もある。
金融商品仲介制度の特徴として、第一に特定の金融商品取引業者等の委託を受けて業務を行う「所属金融商品取引業者等」制度がとられている。
第二に、金融商品仲介行為の範囲が、基本的に「媒介」に限られ「取次ぎ」「代理」が認められていない。所謂「契約代理商」ではなく「媒介代理商」に該当する(商法27条参照)。金融商品仲介業を行う者の媒介による金融商品取引契約を顧客との間で締結する主体は、所属金融商品取引業者等であって、 金融商品仲介業を行う者ではない。
第三に、市場デリバティブ取引、外国市場デリバティブ取引については、取引自体の「媒介」は認められておらず、「委託」の媒介に限られている。
第四に、店頭デリバティブ取引の媒介は認められていない。

5.業の要件

(1)営利性要件の廃止

従前の「証券業」や「投資信託委託業」などは「営業」とされ、営利性が業の要件とされてきた(証取法2条8項、改正前の投資信託、投資法人法6条)。
一方、従前の「金融先物取引業」は「業」とされ、営利性は業の要件とされていなかった(廃止前の金先法2条12項)。
これに対して金商法2条8項各号に掲げられているのは、「行為」である。「金融商品取引業」は、これらの行為の何れかを「業として」行う事と定義されている(同項柱書)。
「営業」とは規定されていない事から、営利性は業の要件とされていない。

(2)業の意味

a.概要

この「業として」の意味は、「対公衆性」のある行為で、反復継続して行われるものであると解される。
「反復継続性」に加え、「対公衆性」が要件とされている。

b.「対公衆性」要件の趣旨

「対公衆性」は主として、一般の個人や事業会社が、投資目的や資産運用目的で、頻繁に自己の計算にて行う有価証券売買やデリバティブ取引について、「単に自己のポートフォリオの改善の為に行う投資目的での頻繁な売買」として、業規制の対象とならない様にする為に設けられた要件と考えられる。
金融機関が他の法律(銀行法10条2項2号など)の定める所により、投資目的を以って有価証券売買又は有価証券関連デリバティブ取引を行う事が出来る旨の規定(法33条1項但書)は、当該解釈を前提とする確認的規定である。
これに対し業者である金融商品取引業者が行うディーリング業務やトレーディング業務については、規制の必要性がある事から、「業として」に該当すると解される。

c.「対公衆性」要件の機能

「対公衆性」要件は、実務的には「業として」として捉える事が社会通念に照らして適当でないと考えられる行為を例外的に除外する機能を有するに留まる。例えば完全親会社と完全子会社のみが当事者の場合、原則として「対公衆性」が無いと捉えて、「業として」に該当しないと解する事が出来る。 
一方、「対公衆性」要件について、これを「業として」の要件とする事に否定的見解もある。当該見
解を勘案すると、「対公衆性」を要件とする場合であれ、「対公衆性」が認められない事を理由とし、「業として」でないと判断する事については慎重な検討が必要である。
特に「対公衆性」を「不特定多数」や「多数」の意味として広く捉える事は適当でなく、厳格に捉える必要がある。
顧客が適格機関投資家のみである場合や特定投資家のみである場合であっても、「業として」から除外されるものではない。

d.「対公衆性」要件と「反復継続性」要件の解釈

「対公衆性」及び「反復継続性」について、現実に「対公衆性」のある行為が「反復継続」して行われている場合のみならず、「対公衆性」「反復継続性」が想定されている場合なども含まれる。
又、具体的な行為が「対公衆性」「反復継続性」を有するものであるか否かについては、個別事例毎に実態に即して実質的に判断されるべきものである。
無登録業者に対する民事効の創設(法171条の2)などを踏まえると、「業として」への該当性については、実質的に一層慎重な判断が求められる。