法務デッドエクイティスワップ(DES)について

1.デッドエクイティスワップ(DES)の意義と2つの類型

デッドエクイティスワップ(DES)は、一般に経営不振に陥った企業の財務内容を改善、再建させる手段のひとつとして用いられ、主として①現物出資型DESと②金銭払込型DESがある。

①現物出資型DES

債権者が保有する債権を、当該債権の債務者に対して現物出資する方法。

②金銭払込型DES

債権者が金銭出資に拠り債務者から新株発行を受け、債務者は受け取った出資金を使い債権者に対する債務を弁済する方法。

2.会社法とDES

会社法上の議論として、DESが行われた際に新株発行価額総額をどの様に解すべきかにつき、会社の財務内容を反映した債権の評価額を基準とすべきとする評価額説と、債権の券面額を基準とすべきとする券面額説の2つの見解があるが、平成12年以降東京地裁が券面額説を採用する事を明らかにしてから、学者・実務家の間で券面額税が大勢となった。平成18年会社法改正で、現物出資時の資本金等増加限度額を原則、現物出資財産の給付期日に於ける「価額」とされた事から(会社計算14条1項2号)、会社法は評価額説を採用したと解する見解もあるが、券面額説を支持する学説が有力である(会社207条9項5号参照)。
法人税法に於いては、平成18年度税制改正(法税59条1・2項等の改正)に拠り、評価額説を採用したと解する見解が有力。

3.現物出資型DESの課税上の取扱い

(1)現物出資型DESの課税関係の概要

現物出資型DESは、現物出資一類型で、基本的な課税関係は現物出資同様である。 
しかし、DESの場合、出資対象になる財産が出資先に対する債権である事や、経営不振に陥っている企業に対する支援に使用される事が多いという特徴を有する事から、債権者側では、
①出資時に於ける債権譲渡損益発生の有無
②債権譲渡損の損金算入の可否
が債務者側では
①出資対象とされた債権取得価額(簿価、時価又は券面額)
②当該債権と債務者側の債務との混同に拠る債務消滅益発生の有無
③債務消滅益が生じた場合の期限切れ繰越欠損金の利用の可否
などが問題になる。

(2)債権者側の税務

①非適格現物出資の場合(原則)
  • DESが非適格現物出資に該当する場合の課税上取扱いDESが非適格現物出資の場合、原則出資対象となった債権の時価と当該債権の帳簿価額との差額が譲渡損益とされる。
    但し、当該譲渡損の損金算入の可否については、下記にて述べる。
  • 債権譲渡損の損金算入の可否
    DESは、経営不振企業再建に用する事が多い事から、DESに拠り生じた債権譲渡損の損金算入の可否が問題となる。
    この点法人税基本通達2-3-14は、子会社等に対して債権を有する法人が、合理的な再建計画の定める所に拠り、当該債権を現物出資し、株式取得した場合に生じたものである場合は、DESに拠り取得した株式の取得価額は「当該債権の価額」とすると明記される事から、合理的な再建計画等の定める所に拠ってDESが行われた場合は、当該DESに拠り生じた債権譲渡損は損金算入出来ると考えられているが、DESの当事者に完全支配関係がある場合で譲渡損益調整資産に該当する時は、課税が繰り延べられる(法税61条の13)
    その他の場合には、子会社等を整理、再建する場合の損失負担等に該当するか否かを検討し(法基通9-4-1・9-4-2参照)、是に該当せず、当該債権譲渡損が実質的に贈与又は無償の経済的利益の供与に該当する場合は、寄附金(法税37条)として処理されると考えられる。尚、債権譲渡損が寄附金とされる場合に於いて、DESの当事者間に法人に拠る完全支配関係がある場合で被現物出資法人の債務消滅益と対応関係があるものに限り、全額損金不算入となる(法税37条2項)。
②適格現物出資の場合(例外)
  • DESが適格現物出資に該当する場合の課税上取扱い
    DESが適格要件を充足し、適格現物出資に関する規定が適用される場合は、等価譲渡となる故、債権者側に於いては、現物出資時に損益は認識されず、課税が繰り延べられる(法税62条の4第1項)。債権者がDESに拠り取得する株式価額は、DESの対象となった債権の現物出資直前の帳簿価額相当額となる(法税令119条1項7号)。
  • 株式評価損の損金算入の可否
    一般的に株式の含み損は、その価額が著しく低下している場合に損金算入が認められるとされるが(法税33条2項、法税令68条2項)、DESに拠り取得した発行会社の株式を評価換えする事に拠り評価損を損金算入する事の可否については問題が残る。
    この点法人税基本通達9-1-12は、上場有価証券以外の株式等につき、増資払込み直後の評価損の計上は出来無いとし、この場合には、相当期間経過後に株式評価が著しく下落した場合に評価損の計上が認められる余地アリとしている。

(3)債務者側の税務

①債務消滅益の益金計上

法人が現物出資に拠り新株発行又は自己株式交付する場合は、当該新株発行及び自己株式交付は資本等取引として、課税関係は生じない(法税22条5項)。DESに於いては、出資後の法的効果とし、出資された債権と出資受入法人の債務の混同(民520条)に拠る消滅が生じる。是に拠り発生した債務消滅益は、DESを資本等取引の要素と損益取引の要素から成る混合取引と捉えた場合は、債務者の課税所得の算定上益金とされる。
この様にDESを混合取引と捉えた場合、原則債務者に於いては、出資された債権の時価と自己の債務の券面額との差額がある場合は、債務消滅益が認識され、益金として計上される。但しDESが適格要件を充足し、適格現物出資に関する規定が適用される場合で、出資された債権の帳簿価額と自己の債務の券面額が一致している場合は、債務消滅益は生じない。又、DESの際に被現物出資法人に債務消滅益が生じる場合も、DESの当事社間に法人に拠る完全支配関係がある時、現物出資法人の寄附金と対応関係がある債務消滅益は益金に算入されない(法税25条の2)。

②債務消滅益と期限切れ繰越欠損金

平成18年度税制改正に拠り、会社更生法に基付く更生手続開始決定や民事再生法に基付く再生手続開始決定等があった時に行われるDESに拠り発生した債務消滅益を、原則青色繰越欠損金に優先して、期限切れ繰越欠損金と相殺する事が認められている(法税59条1・2項)。

4.金銭払込型DESの課税上取扱い

法人による疑似DESの課税関係
債権者(出資者)側 債務者(発行法人)側
出資財産又は対価の取得価額 株式の取得価額は、原則として、金銭の払込金額 資本金等の額の増加額は出資財産たる金銭の払込金額
損益の認識 DES直後の株式評価損の計上は原則不可(法基通9-1-12参照 資本等取引のため、課税なし

(1)債権者側の税務

①対価として取得する株式価額と寄附金課税のリスク

金銭払込型DESの場合、通常の金銭出資が行われる為、原則取得した株式価額は「払込みをした金銭の額」となる(法税令119条1項2号)。DESに拠り取得した株式につきDES直後に評価損を計上し、損金算入する事は制限される事に留意(法基通9-1-12参照)。
又、増資新株の時価に比して増資払込金が著しく過大と認められる場合に、その過大部分につき実質的に「払込みをした金銭の額」に該当しないなどとし寄附金認定した相互タクシー事件(福井地判平13・1・17税資250・8815.名古屋高金沢支判平14・5・15税資252・9121、最決平14・10・15税資252・9213(上告棄却及び上告申し立て不受理決定))や日本スリーエス事件(東京地判平12・11・30税資249・884、東京高判平13・7・5税資251・8943(確定))は、何れの事案も債務超過の子会社の株式を額面よりも著しく高い発行価額で金銭払込型DESに拠り取得し、その直後に当該株式を第三者に売却し、多額の売却損の損金算入を図った租税回避事業であり、必ずしも金銭払込型DES全般に関し係る寄附金認定リスクがある訳ではない。

(2)債務者側の税務

法人が金銭出資に拠り新株発行又は自己株式交付する場合は、当該新株発行及び自己株式交付は資本等取引として、原則課税関係は生じず(法税22条5項)、金銭払込相当額につき「資本金等の額」が増加(法税2条16号、法税令8条1項柱書1号)。