法務新株発行(金銭出資) 第三者割当てについて

株主割当て以外の新株発行(第三者に対する有利発行や、時価公募含む)に於ける税務上の取扱いにつき、以下の通り時価発行、有利発行各々説明する。

1.時価発行

(1)株式発行会社

発行会社に払込まれた金銭の額は、税務上資本金等の額となる(法税2条16号、法税令8条1項1号)。
発行会社に於いて、払込まれた金銭には、法人税は課されない(法税22条2‐5項)。

(2)出資を履行し株主となる者(株式引受人)

①法人株主の場合

法人が金銭の払込みに拠り株式取得した場合の株式取得価額は、払込みをした金銭の額に払込みに拠る株式取得に要した費用の額を加算した金額(法税令119条1項2号)。
時価発行では、株主引受人である法人株主に対し法人税は課されない。

②個人株主の場合

株主割当て同様、株主間価値移転が無いので、株主に対し、所得税・贈与税は課されない。

③上記①の株式引受人以外の株主(新株発行会社の既存の株主で新株取得(ない者)

時価発行の新株発行では、株主間経済的利益移転が無いので、株主に対し、法人税・所得税・贈与税は課されない。

2.有利発行

(1)株式発行会社

①税務処理及び課税

株主割当て同様、発行会社に払込まれた金銭の額は、税務上資本金等の額となる(法税2条16号、法税令8条1項1号)。
発行会社に於いて、払込まれた金銭には、法人税は課されない(法税22条2‐5項)。

②役員等に対する第三者割当ての有利発行の場合の所得税源泉徴収

下記(3)の通り、第三者割当ての有利発行に拠り役員又は使用人に対して株式取得する権利を付与した場合は、その役員等は、新株の時価と発行価額との差額に相当する金額の利益を得る事となり、給与所得又は退職所得が発生したものとされる事がある(所税36条2項、所税令84条2項5号、所基通23~35共-6(3))。
この様に給与所得又は退職所得として所得税が課される場合、株式発行会社は、その所得につき算定される所得税を源泉徴収して国に納付する義務が生じる(所税6条・183条・199条)。

(2)出資を履行し株主となる者(株式引受人)

①法人株主

法人が金銭の払込みに拠り第三者割当て・有利発行にて株式取得した場合の株式取得価額は時価(「その取得時に於けるその有価証券取得に通常要する価額」。
法税令119条1項4号)。この場合、株式取得した法人には、新株の時価と払込み金額との差額につき益金が生じ、法人税が課される(法税22条2項(無性に拠る資産の譲受け))。

  • 「通常要する価額に比して有利な金額」
    株式取得に「通常要する価額に比して有利な金額」(法税令119条、1項4号)とは、「当該株式の払込み又は給付の金額を決定する日の現況に於ける当該発行法人の株式価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいう」とされる(法基通2-3-7)。更に同通達(注)に於いて下記の通り定められている。
  1. 社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは、当該株式の価額と払込金額との差額が当該株式価額の概ね10%相当額以上であるかどうかに拠り判定。
  2. 払込金額等を決定する日の現況に於ける当該株式価額とは、決定日の価額のみをいうのではなく、決定日前1ヶ月間の平均株価等、払込金額等を決定する為の基礎として相当と認められる価額。
(a) 上場株式等 その新株の払込期日における新株の最終の売買の価格
(b) その他の株式
(1) 売買実例のあるもの 払込期日前6カ月間において売買の行われたもののうち適当と認められるものの価額
(2) 公開途上にある株式で、当該株式の上場に際して株式の公募
又は売出しが行われるもの((1)に該当するものを除く)
金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価値があるもの(上記(2)に該当するものを除く) 当該価額に比準して推定した価額
(4) 上記(3)に該当しないもの 新株の払込期日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株あたりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
  • 「有価証券取得の為に通常要する価額」
    「有価証券取得の為に通常要する価額」(時価)(法税令119条1項4号)について、法人税法基本通達に於いて、上記表通りとされる(法基通2-3-9・2-3-30~2-3-34・4-1-4~4-1-6)。
    尚、上記表(b)③及び④に於いては、相続税の評価方式の条件付の準用的修正適用が認められている(法基通4-1-6)。
②個人株主

有利発行の場合、他の株主から株式取得した個人に価値移転がある事から、その経済的利益について所得税が課される(所税36条1項-2項)。
この場合の株式取得価額は、払込期日に於ける時価(所税令109条1項2号)。株式取得した個人の所得金額は払込期日に於ける株式の時価から株式の発行価額を控除した額(所税令84条2項5号)。
所得区分は以下の通り(所基通23~35共-6(3))。

  1. 原則一時所得
  2. 発行法人役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関連し、有利発行の権利が与えられたと認められる時は給与所得
  3. 上記イ.の者の退職に基因して有利発行の権利が与えられたと認められる時は退職

所得
給与所得又は退職所得に該当する場合に源泉徴収義務が生じるのは上記2(1)②の通り。
尚、相続税法基本通達9-4に於いて、同族会社が新株発行する場合、当該新株に係る引受権(会社206条)の全部又は一部が当該同族会社の株主等の親族等に与えられ、当該新株引受権に基付き新株取得した時は、原則当該株主の親族等、当該募集株式引受権を当該株主から贈与に拠って取得したものとして取り扱うものとされる(相税9条)。
但し、同通達に於いて、当該募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税課税対象となる場合を除くとされる。

(3)上記(2)株式引受人以外の株主(新株発行会社の既存の株主で新株取得しない者)

第三者割当ての有利発行では、従来から株式を有している他の株主の株式価値は減少するのに対し、新株取得した株主は払込み価額と新株の時価との差額につき経済的利益を有する事になるので、他の株主から新株取得した株主に経済的利益が移転している。
しかし通常他の株主は、、有利発行に係る取引に関与していない点から、他の法人株主にとって、第三者割当ての有利発行は、益金を生じさせる「無償に拠る資産の譲渡...その他の取引」(法税22条2項)には該当しない。従って通常従来からの株主に対し法人税は課されない。
但し、最高裁判例に於いて、親会社が100%出資の子会社の発行済株式の15倍の新株を関連会社に著しく有利な価格で発行させ、子会社の資産価値を親会社から関連会社に移転させた事業に於いて、この資産価値の移転は、法人税法22条2項の取引に当たるとし、親会社の当該事業年度の益金の額に算入すると判断されたものがある(オウブンシャホールディング事件。最判平18-1・24判夕1203・108)。