法務新株発行(金銭出資)の概要について

1. 会社法上の定義

新株発行につき、会社法では第2編「株式会社」第2章「株式」第18節(199条~213条の3)に「募集株式の発行等」を設けている。
募集株式とは、「当該募集に応じ、これらの株式の引受けの申込みをした者に対し割り当てる株式」(199条1項)である。募集株式には、新たに発行される株式のみならず、処分される自己株式も含む。

会社法上、株式会社では、原則、株主になる者が給付又は払込みをした財産の額が資本金の額となるが、給付又は払込みをした財産額の2分の1を超えない額については資本金として計上せず、資本金備金とする事が出来る(445条1~3項)。

2. 税法の考え方

新株発行につき、租税法上の定義規定は定められていないが、法人税法施行令8条1項1号、3号の資本金等の額の規定に「株式の発行」及び「自己株式の交付について定められており、税務上、発行会社に払い込まれた金銭の額は、発行会社の資本金等の額となり(法税2条16号、法税令8条1項1号)、資本金取引(法税122条5項)に該当し、株式会社に於いて、払い込まれた金銭には、法人税は課されない。

3. 新株発行(金銭出資)の税務上の取扱い概要

ここでは株主割当てか第三者割当て(公募含む)かで分けた上で、それぞれで登上する三者(a発行会社、b出資を履行し株主となる者(株式引受人)及びc株式引受人以外の株主)について、税務上取扱い概要を説く。

(1)株主割当て

①株式の発行会社

発行会社に払い込まれた金銭の額は、資本金等の額となり(法税2条16号、法税令8条1項1号)、払い込まれた金銭には法人税は課されない。

②出資を履行し株主となる者(株式引受人)

・法人株主の場合

  1. 株式取得価額

    原則、払込みをした金銭の額に払込みに拠る株式取得の為に要した費用の額を加算した金額(法税令119条1項2号)をいう。
    有利発行の場合は時価(法税令119条1項4号)。

  2. 法人税の課税

    1. 時価発行 課されない
    2. 有利発行 株主割当てで、「他の株主等に損害を及ぼすおそれが無いと認められる場合」(法税令119条1項4号、法基通2-3-8)には課されない。
      それ以外では、新株の時価と払込金額との差額について、新株取得時点に於いて受贈益の計上が発生し課税される(法税22条2項、無償に拠る資産の譲受け)。

・個人株主の場合

  1. 株式取得価額
    原則、払込みをした金銭の額に払込みに拠る株式取得の為に要した費用の額を加算した金額(所税令109条1項1条)をいう。
    有利発行の場合は時価(所税令109条1項3号)。
  2. 課税

    1. 時価発行 所得税・贈与税は課されない
    2. 有利発行 株主割当てで、「他の株主等に損害を及ぼすおそれが無いと認められる場合」(所税令84条2項)には所得税は課されない。それ以外では、新株の時価と払込金額との差額について、株式申込みをした日(所基通23~35共-6の2)に於いて所得税法36条2項の収入金額があるものとして課税される。

      尚、同族会社では、失権株が生じる事に拠り、新株を取得した個人株主が利益を受けた場合に贈与税が課される事がある(相税9条、相基通9-7)。

③上記②以外の株主(新株発行会社の既存の株主であるが、新株につき、払込みをせず、新株取得をせぬ者(失権株))

法人税・所得税・贈与税は課されない。

(2)第三者割当て(公募含む)

①時価発行の場合
  • 株式の発行会社
    発行会社に払込まれた金銭の額は、資本金等の額となり(法税2条16号、法税令8条1項1号)、払込まれた金銭には、法人税は課されない。
  • 出資を履行し株主となる者(株式引受人)
  1. 法人株主の場合
    法人税は課されない(時価取得しているので受贈益は発生しない)。
    株式の取得価額は、払込みをした金銭の額に払込みに拠る株式取得の為に要した費用の額を加算した金額(法税令119条1項2号)。
  2. 個人株主の場合
    所得税・贈与税は課されない(時価取得しているので株主間で経済的利益の移転は生じない)。
    株式の取得価額は払込みをした金銭の額に払込みに拠る
    株式取得の為に要した費用の額を加算した金額(所税令109条1項1号)。

    • 株主引受人以外の株主(新株発行会社の既存の株主で、新株取得しない者)
      法人税・所得税・贈与税は課されない(時価で取得しているので、株主間経済的利益移転は生じない)。
②有利発行の場合
  • 株式の発行会社
    発行会社に払込まれた金銭の額は、資本金等の額となり(法税2条16号、法税令8条1項1号)、払込まれた金銭には法人税は課されない。
  • 出資を履行し株主となる者(株式引受人)

    1. 法人株主の場合.
      株式取得価額は時価(法税令119条1項4号)。
      新株の時価と払込金額との差額につき、益金が生じ法人税が課される(法税22条2項(無償に拠る資産の譲受け))
    2. 個人株主の場合.
      株式取得総額は、払込期日の時価(所税令109条1項3号)。
      払込期日に於ける株式の時価から株式発行価額を控除した額につき、所得税が課される(所税36条、所税令84条2項5号・109条1項3号)。
      尚、同族会社では贈与税が課される事がある(相税9条,相基通9-4)。

      • 株式引受人以外の株主(新株発行会社の既存の株主で新株取得しない者)
        原則、法人税・所得税・贈与税は課されない。