税務マネーロンダリングにかかわる法律

 此処暫くFinTechに纏わる法律とマネーロンダリングについて書き記してきたが、我々KPT Alliance groupが本拠地をアラブ首長国連邦のドバイに置き、我が国日本を含む16カ国に事業拠点が稼働しており、通信事業を主体とした国際決済サービス、貿易業務を提供している。具体的には海外進出企業(我が国より海外に進出した企業や海外より我が国に進出してきた企業)の決済業務、進出支援を行うプラットフォーム企業である。
 為替リスクや国際租税リスクに於ける事業効率化を図る上で、”お金”に関する法律に準拠する事は当然の事乍ら、凄まじいスピードで変化する世界情勢と其に伴い変化、改正される法律の詳細を分析する事は、是日々常態化しているのである。

 其処で此度FinTechに纏わる法律、就中犯罪収益移転防止法とマネーロンダリングについて、小生成りの纏め的な記述と共に、急転直下の目紛しく変化した仮想通貨を巡っての状況を述べていこうと思う次第である。

 犯罪収益移転防止法(以下犯収法)は、犯罪に拠る収益移転(マネーロンダリング)の防止を図り、又、テロ資金供与防止に関する国際条約等の的確確実実施確保を狙った法律で、是等を通じ、国民生活に於ける安全、平穏確保、其と共に経済活動に於ける健全な発展、進展に寄与する事を目的にしている。
 犯収法に於いては、金融機関等特定事業者に対し、マネーロンダリングの可能性が高い一定類型取引に於いて、顧客の住所、氏名などを免許証等身分証明書に拠る確認義務(取引時確認義務)、確認した事項記録義務(確認記録作成保存義務)、確認記録対象にならない取引に於ける一定事項記録義務(取引記録作成保存義務)、疑わしい取引届出義務、体制整備義務などを課す。

条文

義務主体

内容

法4条

特定事業者

顧客等との取引の取引時確認義務

法6条

特定事業者

取引時確認を行った場合の確認記録の作成・保存義務(7年)

法7条

特定事業者

取引記録の作成・保存義務(7年)

法8条

特定事業者

(士業者除く)

疑わしい取引の届出義務

法9条
(新設)

特定事業者

(銀行、信用金庫、資金移動業者等の為替取引の可能な金融機関)

外国為替取引業者と為替取引(送金)を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約(コルレス契約)を締結するに際しての確認・記録義務

法10条
(旧9条)

特定事業者

顧客と本邦から外国へ向けた支払いに係る為替取引(送金)を行う場合において、当該支払を他の特定事業者又は外国所在為替取引事業者に委託する際の通知義務

法11条
(旧10条)

特定事業者

 取引時確認を的確に行うための措置。具体的には、①取引時確認事項を最新に保つための措置を講ずる義務、及び、②(i)使用人に対する教育訓練、(ii)取引時確認等の措置の的確な実施に関する(内部)規定の作成、(iii)業務統括管理者の選定等の努力義務

 犯収法に基づく取引時確認義務であるが、特定事業者対象義務であり、その内訳は、金融関連業者、ファイナンスリース業者、クレジットカード業者、宅建取引業者、貴金属等取扱業者、郵便物受取サービス業者、電話受付代行・電話転送サービス事業者、士業者の七つ。
 尚、是等七種の何れにも該当しない場合、例を挙げるに、特定事業者の委託先など。しかし犯収法違反を委託元が犯した際の民事上に於ける債務不履行責任が問題となるが、やはり委託契約に基づいて、犯収法に於ける手続きに対する理解を要し、適切に履践せねばならない。又、各々業種に拠り、取引時確認等範囲の差異にも注意を要する。更に個人事業主であれ、此の七業種に該当すれば特定事業者となり得る。

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応する為の銀行法等の一部を改正する法律(平成28年改正犯収法)に拠り、仮想通貨交換業者が特定事業者に追加された。読み飛ばして頂いても構わないが、良く分かっていない貴兄等の為に、仮想通貨交換業とは、

  • 仮想通貨売買又は、他の仮想通貨との交換
  • イに挙げた行為媒介、取次、代理
  • イ・ロに関し、利用者金銭又は仮想通貨管理をする

 因みに欧州第五次マネロン指令案に拠れば、ウォレットサービスに迄、その範囲が及んでいる。
 特定事業者としての金融関連業者が多岐に亘る故、列挙しておく。

    1. 銀行
    2. 信用金庫
    3. 信用金庫連合会
    4. 労働金庫
    5. 労働金庫連合会
    6. 信用協同組合
    7. 信用協同組合連合会
    8. 農業協同組合
    9. 農業協同組合連合会
    10. 漁業協同組合
    11. 漁業協同組合連合会
    12. 水産加工業協同組合
    13. 水産加工業協同組合連合会
    14. 農林中央金庫
    15. 株式会社商工組合中央金庫
    16. 株式会社日本政策投資銀行
    17. 保険会社
    18. 外国保険会社等
    19. 少額短期保険業者
    20. 共済水産業協同組合連合会
    21. 金融商品取引業者(第一種金融商品取引業者、第二種金融商品取引業者、投資助言・代理業者、投資運用業者)
    22. 証券金融会社
    23. 適格機関投資家特例業者
    24. 信託会社
    25. 登録自己信託会社
    26. 不動産特定共同事業者(信託会社若しくは兼営兼 営金融機関であって、不動産特定共同事業を営むものを含む)又は不動産特定共同事業法に基づく特例事業者)
    27. 無尽会社
    28. 貸金業者
    29. 金融庁長官の指定する短資業者
    30. 資金移動業者
    31. 仮想通貨交換業者
    32. 商品先物取引業者
    33. 振替機関(振替機関とみなされる日本銀行を含む)
    34. 口座管理機関
    35. 電子債権記録機関
    36. 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構
    37. 外貨両替業者・トラベラーズチェック取引業者

 此処からは、FATF勧告について述べる。
 FATF勧告に於いて、金融機関と特定金融業者及び職業専門家に対し、取引次確認等の顧客管理措置、記録保存業務を課している。此処でいう金融機関とは、FATF勧告に於いては、下記に記す事業者をいう。

    1. 預金その他の資金受け入れ
    2. 貸付(ファクタリングを含む)
    3. ファイナンスリース
    4. 資金移動
    5. 支払手段発行及び取扱い(クレジットカード、トラベラーズチェック、マネーオーダー、銀行手形、電子マネーなど)
    6. 金融に拠る保証及び予約
    7. イ、金融証券(手形、小切手、預金証書、デリバティブなど)
      ロ、外国為替
      ハ、為替、利率及び指標に係る権利を表示する証券
      ニ、譲渡可能な証券
      ホ、商品先物取引
    8. 証券発行の取扱い及び是に係る金融サービス提供
    9. 個別又は包括的資産運用
    10. 第三者の為の現金又は流動的証券の保管預かり又は管理
    11. 第三者の為の投資、保管又は資産管理
    12. 生命保険その他保険引受け
    13. 両替

 FATFの動向に注意を要する点として、ファクタリング、保証、電子マネー、両替などの業務を金融機関の範囲に含める所である。我が国犯収法に於いては、条文解釈するに特定事業者の類型に対応していると言い切れない。尚、FATF勧告26に於いて、金融機関については、登録、許可、認可の制度が求められる。
 注意を要するといえば、貴兄等の中には仮想通貨を投機目的に活用されてきた者も多かろう。FATFでは2015(平成27)年6月、FATFに係るガイドラインを発表したが、其の中で電子マネーや仮想通貨などを換金可能なものをOPEN型(送金業に該当するものとし、顧客管理措置を義務付け)と換金不可のものをCLOSE型として二分、CLOSE型に於いては分析、検討するとしている。
 是は偏にクレジットカードを持てない者を含め、ビットコインなどの仮想通貨が安価な送金手段として広範利用可能で、海外で其の利用を伸ばしているが、ISISなどテロリストにも悪用され、マネーロンダリング、テロ資金供与に悪用されると考えれば当然の事であろう。 FATFの指針に沿い、我が国に於いても仮想通貨交換業については資金移動業登録対象とし、犯収法に於ける特定事業者とされる内容の法改正が成されたのは前述しているが、此の改正でビットコインなど仮想通貨の我が国に於ける法的位置が確定(ものではなくお金である)、ビットコインなどの取引が容易になると期待される節もある。
 しかし乍ら、為替取引規則は如何様か。仮想通貨売買取引に於いて、為替取引・資金移動は従前其々別々と捉えられており、仮想通貨取引業者が顧客同士の間に於ける仮想通貨価値移転などに携わった際、銀行免許、資金移動業登録なしに為替取引に該当してしまう問題が浮き堀りである。仮想通貨を送金に活用すれば資金移動している事になる。金融庁事務ガイドラインにも法第37条に基づく資金移動業登録が必要となり得ると釘を刺している。
 扨、2016(平成28)年改正犯収法に拠り、仮想通貨取引業者に於いて、取引時確認等義務が課せられたが、P to Pの仮想通貨移転の関係については、取引時確認義務が不要の場合があるなど、個人間で移転を繰り返す事で、マネーロンダリング、テロ資金供与に悪用される可能性は全く払拭出来ない。前述の欧州に於ける第五次マネロン規制も去る事乍ら、今後の欧州の動向にも注視せねばならない。 2017年10月10日付日経新聞10面”EU課税強化で温度差”という記事を見ても、仮想通貨交換業のみならず、EUに進出するIT企業に対する各国の動向も目を離せない。というのも、欧州に於いて仮想通貨価値下落を受け損失を被る金融機関も出ており、抑ビットコインなど裏付資産も無い。況してや国、地域、発行体に於ける債務保証すら無い。
 単なるデータであり、価値が認められている間が華なだけである。そうでなくとも、現に2017年9月6日付日経新聞3面”中国、ICO全面禁止”9月9日付3面、”仮想通貨取引所閉鎖”、9月10日付3面”中国仮想通貨の取引所閉鎖報道 元立てビットコイン急落”の文字が紙面を禍々しく踊った。更にICO全面禁止を発した韓国に於いても10月3日付7面”仮想通貨が標的に 北朝鮮のサイバー攻撃”、と報じられた通り、将来、発行の停止も視野に早急の対策をオススメする。我が国に於いても仮想通貨交換業に対し、高過ぎるのではないかと感じさせるハードルを課し、其の中でも11社が登録を済ませた様で、小生としては、日銀が手綱を握り、馬車馬と化したメガバンク3社が、仮想通貨ビジネスを牛耳り、ビットフライヤー始め、ハードルを何とかクリアした11社も明け透けにされた収益からガッツリ課税される。国税が北叟笑んでいるのが目に浮かぶ。 欧州銀行監督当局は欧州金融機関に対し、ビットコイン等の仮想通貨保有について、欧州に於ける規制導入決定迄は慎重であるべきと、やや消極的姿勢を示し、我が国に於いては、ビットコイン購入は、銀行が営む事が出来る業務には該当しないが、銀行が業務に至らない程度の範囲でお尋ねの”ビットコインを購入する事”等の行為を行う事については、其等が適切であるか否かは別として、銀行が業務に至らない程度の範囲で業務に直接関係の無い物品等を購入する事と同様、同法上其等の行為を明示的に禁止する旨の規定は存在しないなどと、弱腰な回答をしており、我が国金融機関などがビットコイン等仮想通貨を購入する際に考慮されるものかと思われるが、マウントゴックスの二の舞いにならぬ様留意して頂きたいものである。 換金可能且つ利用者間譲渡可能な電子マネーに於いては、送金利用可能であるが故、為替取引に該当する場合が多く、資金移動業登録を経ている場合が多い。電子マネーの内、資金移動業者に該当する類型には、法2条2項30号。前払式支払手段に該当する類型としては、犯収法絡みで特定事業者に該当せず。前払式支払手段は換金可能性(資金決済法20条払戻し原則禁止規定)を欠いており、マネーロンダリングに拠る送金に悪用される可能性は資金移動業程ではないからである。
 しかし乍ら、FATFが検討を続けるCLOSE型電子マネー仮想通貨がマネーロンダリングに悪用される畏れが指摘されている以上、電子マネー発行企業も特定事業者類型に充て嵌まる可能性は否めない。
FATF勧告に於いて、両替業、ファイナンスリース業に於いても、許可、登録制対象にする旨を求めているが、我が国としては、両替、ファイナンスリース両業務に参入規制を課しておらず、FATFより改善指摘されているにも拘らず、2014(平成26)年改正に於いても対応していない。 2017(平成29)年改正資金決済法に於いて、電子決済等代行業に対して登録制が導入されたが、犯収法対象とはなっていない。翻って欧州に於いては、Payment Initiation Service Provider、Payment Information Service ProviderとしPayment Institutionに該当、マネーロンダリング規制対象と認識している点で我が国の甘さが際立つ。
 最後にFATF勧告に於ける特定非金融業者及び職業専門家について述べておく。是等業種に於いてもFATF勧告では、マネーロンダリングに悪用される可能性を指摘し、本人確認など顧客管理措置、記録保存義務を課すべきとして、FATF勧告22にて事業者列挙している。下記に纏めた。

    1. カジノ(一定敷居値額以上の取引を顧客とする際が対象)
    2. 不動産取引業者(顧客不動産売買関与の場合が対象)
    3. 貴金属等取扱業者(一定敷居値額以上の現金取引を顧客とする際が対象)
    4. 弁護士、公証人その他独立した法的専門家、会計士(不動産売買、顧客資産管理・銀行口座等管理、会社設立等に拠る出資アレンジ、法人設立運営・管理、事業譲渡に係る取引又其の準備への関与を顧客の為に行う場合に限定)
    5. 信託会社、カンパニーサービスプロバイダー(法人の設立の際の代理、会社取締役等となる場合、取締役等となるべき者を用する場合、会社登記対象となる事務所・事業の為の住所・施設・連絡先・管理の為の住所を提供する場合、信託等受託者となる場合又受託者を用意する場合、様式の名義株主となる場合又名義株主を用意する場合が対象)

 我が国に充て嵌めるならば、1は刑罰に拠り禁止され該当無し(競馬運営に於いては日本中央競馬会(農林水産省全額出資)又は地方公共団体(各都道府県指定市)に限定(競馬法1条の2))、宝くじは地方公共団体(各都道府県指定市)のみ販売が成される(当選金付証票法4条)。
 民間企業が我が国に於いてカジノを運営すると、賭博罪・賭博場開帳罪・富くじ罪(刑法185条-187条)で禁じられており、合法的運営には立法を要する。パチンコはギャンブルの類に属されていない。2016(平成28)年統合型リゾート推進法可決に拠る所、同法関係別途検討を要する。)。
 1は宅建業者、3は貴金属等取扱業者、4は士業者、5は信託会社・信託銀行、郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者・電話転送サービス事業者。尚、ドイツでは会社株式譲渡契約締結・登記に際し、公証人関与を要するなど登記手続きなどに深く関わっている公証人に於いて、FATF勧告に挙がっているものの、我が国公証人に於いては、役割の異なる点などから意図して対応せずである。