税務本邦マネロン対策の沿革・経過措置
我が国に於けるマネーロンダリングについて、是迄米国と比して、其の対策不備やFATF勧告に対する対応の遅れなどを記してきたが、流石に小生も母国を悪く書くのに少々辟易してきた次第である。
先日購入した中央経済社”諸説 犯罪収益移転防止法・外為法(第2版)”に、我が国に於けるマネーロンダリング対策の沿革・経過措置を年表化されていたので、此処で引用しておく。我が国の対応が国際的に大きく遅れている事明白であると同時に、其でいて、世界的マネーロンダリング対策強化の流れを受けて、次第に強化されてきている事も見て取れる。
出来事 | コメント | |
昭和63年12月 | 海外 麻薬及び向精神薬の不正取得の防止に関する国際連合条約採択 | 主として麻薬対策としてのマネーロンダリング防止が意識されていた時期。 麻薬犯罪に係る収益のマネーロンダリング行為を犯罪化し、かつ、マネーロンダリング行為を金融機関を通じて排除しようとする手法が導入された時期。 |
平元年7月 | 海外 アルシュ・サミット 薬物犯罪に関するマネーロンダリング対策における国際協力の強化のため、FATF設置の採択 |
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平2年4月 | 海外 FATF「40の勧告」を提言 上記の麻薬新条約の早期批准やマネーロンダリングを取り締まる国内法制の整備、金融機関による顧客の本人確認及び疑わしい取引報告等の措置を求めるもの |
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平2年6月 | 日本「麻薬等の薬物の不正取引に伴うマネーロンダリングの防止について」と題する通達を発出(大蔵省等) | |
平3年10月 | 日本 麻薬特例法の制定(施行は翌年7月) | |
平7年 | 海外 ハリファックス・サミット 国際組織犯罪対策の取組みの重要性を指摘 |
麻薬対策だけでなく、国際組織犯罪対策としてのマネーロンダリング防止も強く意識されるようになった時期。 |
平8年6月 | 海外 FATF「40の勧告」を改定(第2次FATF勧告) 前提犯罪を重大犯罪に拡大することを義務付け |
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平12年2月 | 日本 組織的犯罪処罰法施行 前提犯罪の拡大 等 |
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平12年 | 海外 国連国際組織犯罪防止条約の採択 | |
平13年9月 | 海外 米国における同時多発テロ | 麻薬対策、国際組織犯罪対策だけでなく、テロ対策としてのマネーロンダリング防止も強く意識されるようになった時期。 |
平13年10月 | 海外
日本 テロ資金供与防止条約」の署名 |
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平14年5月 | 日本 外為法改正 支払等・資本取引にかかる本人確認 |
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平14年6月 | 日本 テロ資金提供処罰法成立・施行 | |
平14年7月 | 日本 改正組織的犯罪処罰法の施行 前提犯罪にテロ資金供与罪を追加 |
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平15年1月 | 日本 金融機関等本人確認法の施行 顧客の本人確認義務等の法制化 |
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平15年6月 | 海外 FATF「40の勧告」を再改定(第3次FATF勧告) 特定非金融業者・職業的専門家(不動産業者・宝石商、法律専門家等)への対象範囲の拡張 |
マネーロンダリング行為を、金融機関だけでなく、特定非金融業者・職業専門家を通じても排除しようとする手法が導入された時期。 |
平19年3月 | 日本 犯罪収益移転防止法成立 金融機関に加え、一定の非金融業者(不動産業者、宝石商等)、士業者への本人確認等の義務付け等 |
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平20年10月 | 海外 FATF(金融活動作業部会)対日相互審査結果の概要が発表
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平23年4月 | 日本 平成23年改正犯罪収益移転防止法成立
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平24年2月 | 海外 FATF「40の勧告」の再改定(第4次FATF勧告)
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大量破壊兵器の対策や、脱税、マネーロンダリング手法の変化への対応のためにマネーロンダリング対策強化が重視されるようになった時期。 |
平25年12月 | みずほ銀行による反社会的勢力に対する提携ローンの問題等により、みずほファイナンシャルグループ・みずほ銀行に対する改善命令 | 日本のマネーロンダリング 対策が遅れていると国際的に強い非難を受け、日本として早急な是正を強いられた時期。 |
平26年6月 | 海外 FATFが日本に対して法整備を求める声明 | |
平26年11月 | 国内 平成26年犯罪収益移転防止法改正法成立
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国内 テロ資金凍結法の可決 | ||
国内 テロ資金提供処罰法改正可決 | ||
平31年7月 ー8月 |
海外 日本に対するFATF相互審査の予定(2020年2月に全体会合/結果発表予定) | |
平32年ー 平33年 |
日本 相互審査の結果を受けた犯収法の改正か |