税務マネーロンダリングと地下銀行

 マネーロンダリングについて、今回は我が国に於ける金融機関を通じないマネーロンダリングの現状を記していく。
 所謂ARS(代替的送金システム)であるが、我が国では地下銀行という言葉の響きに馴染みのある貴兄も多い事であろう。此処では、正業で稼得した適法所得と犯罪収益などの不当所得に分けて、ARSの問題を述べていこう。

 我が国で働く外国人が、自身で稼いだ金を母国家族らに仕送りする為、各々の民族系地下銀行を利用する。小生が思う所、大久保界隈、五反田界隈などで、一見何の店の看板なのか良く分からぬ店が気になっていたのだが、恐らく其等は皆、、、。
 其処は扠措き、街角の輸入食材の店などが地下銀行の役割を担っている。送金先、銀行名、口座番号、依頼人電話番号など記載した書類と共に現金を渡せば、安価な手数料で確実に送金が成される。彼らが地下銀行を利用する理由は様々であるが、母国に残す親兄弟妻子などを養う為の仕送りが欠かせない。
 地下銀行が違法と知り乍ら、我が国金融機関送金手数料が高額であり、彼等母国の外国銀行日本支店数が少ない若しくは無い上に送金に時間を要し過ぎる事などが枷となり、安価迅速確実な送金手段である地下銀行を選ぶのである。

 日本に於ける外国人登録者数が1972年当時74万人であったのに対し、2016年度末に於ける確定値で238万2822人。送金額は1兆円を超えるといわれる。末恐ろしい数字であるが現実に起きている事である。
 2017(平成29)年7月警察庁に於ける”平成28年の犯罪情勢”に拠ると、外国人刑法犯認知件数は、18319件、犯罪の種類としては、特別法犯(覚醒剤取締法、麻薬取締法、大麻取締法、阿片法、銃刀法、売春防止法、外国登録法、入管法)を始め、ピッキングなどに拠る侵入窃盗、自動車泥棒等多岐に亘るが、此の様な犯罪を通じて得た金を本国など海外送金する。此等海外送金は、マンションの一室、飲食店、輸入品店にレンタルビデオ店などにある地下銀行窓口を経て容易に行われている。
 警察庁まとめに拠れば、送金先がアジア、南米、中近東が主である。少々古いものになるが、2003年9月19日付日刊ゲンダイには、地下銀行送金実施を総額年間約4兆円、摘発実績の凡そ100倍に上るとし、東京証券取引所上場企業1503社(金融機関を除く)の2003年3月期決算の総黒字額2兆7581億円の約1.5倍の金が金融機関を通じない手法にて海外流出したのだと告げている。

 上述した事から容易に察するのは、金融機関を通じるマネーロンダリング対策に於ける我が国の法規制では最早全く法の網に掛かる事は無く、司法警察に於いても並大抵の注力で実態解明出来る代物ではない。其は米国の潜入捜査、密告者使用の合法化を以ってしても、実態把握は困難を極めている事を鑑みれば尚更である。
 前提犯罪、犯罪収益収受隠匿、犯罪収益脱税、海外送金業者脱税などを摘発するには、米国の様な、税関、入管当局、海上保安庁、麻薬取締局、IRS-CI(内国歳入庁犯罪捜査局)、CIA、FBI等の情報機関、外国政府機関との密接協力体制を取らねばならず、我が国各象徴縦割り行政克服の可否などで、便々としている場合ではないのだ。

 前述した是等不正送金以外に不法就労、不法入国、不法在留、集団密航などの問題が我が国にあり、犯罪収益不正送金に於いては、前提犯罪摘発可否、麻薬・賭博・売春などの組織犯罪摘発可否、テロ資金対策潜脱などの問題も我が国経済社会治安を根底より不安定にする大問題である。其故、世界各国地域に根を下ろす巨大犯罪組織に於ける我が国末端組織に対し、我が国政府機関が現行法制下でバラバラに散った権限に於いて早急に対処をせぬ限り、地下銀行の解明、殲滅する事は不可能である。
 そうでなくとも、是等地下銀行摘発容疑の殆どが、無許可営業に拠る銀行法違反で、3年以下の懲役、300万円以下の罰金が課せられるが、実際執行猶予付判決、罰金も軽く、不正送金コストリスクと刑罰を置き換えてしまえば、メリットの方が大きいと捉えられても致し方ないのである。

 我が国犯罪収益等没収は、単なる付加刑でしかなく、主刑判決無しの単独での科料は無い(刑法9条)。警察庁の定義でいう所の地下銀行は、銀行法等に基づく免許を得ずに送金依頼された金を不正に海外に送金するものをいい、小口に於ける不特定多数者、民族グループに送金を行う地下銀行に対して、金の出所を追求する事に大した意義は無いかも知れぬが、世界を跨ぐ国際的組織犯罪グループの手に掛かっているとなれば、無許可営業摘発程度で鬼の首を取ったと言わんばかりの顔をせず、是等の金を送金する組織犯罪グループの資金の出所を始め、資金フローチャート把握、犯罪実体捕捉と、前提犯罪摘発こそが重要な意味を持ってくる。小生ならばとっくに是等犯罪収益に課税するが何か?
 犯罪収益隠匿、仮装に於いて、不申告犯として重加算税、不正行為に拠り税を免れているのであるから脱税犯として、300万円などと生温い事はせず、5年以下の懲役、500万円以下の罰金の併科位が丁度良い。
 地下銀行実体解明、摘発に於いて、無許可営業摘発などではなく、脱税摘発迄深くメスを切り込めなければ、司法警察、国税庁査察共々存在の意味が無いのではないか。我が国の此の二大法執行機関に於ける強力なタッグを作り、其の成果を我等国民に知らしめて欲しいものである。何故なら、我が国各機関は遥かに優れているのだ。韓国人の送金に於いて、輸入雑貨商摘発した大阪府警、パキスタン人摘発兵庫県警、タイ人組織摘発愛知県警、ネパール不法滞在者送金摘発群馬県警、元酒田短大中国人摘発東京入管局などの摘発成功事例は氷山の一角とはいえ、着実に犯罪者を追い詰めているのだから。