法務FinTechと電子帳簿保存法

 FinTechに纏わる法律について、次は、電子帳簿保存法について記していく。

 1998年制定電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)は一定要件を満たせば、税務申告に要する帳簿書類電子保存を可能とする法律である。電子帳簿保存法要件を満たすスキャナを使用し領収書などを電子化すれば原本保存不要である。
 アカウントアグリゲーションや複数口座情報一元化サービス(PFM)、確定申告支援サービスなどを提供する企業は是等を活かし、領収書と会計データを紐付け管理機能の利用促進をしている。

 電子帳簿保存法は、紙文書一般の電子保存に於ける民間事業者が行う書面の保存等に於ける情報通信の技術の利用に関する法律と民間事業者等が行う書面の保存等に於ける情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の総称(e-文書法)と一体となり、紙媒体電子化促進の為の法律である。
 2015(平成27)年度及び2016(平成28)年度税制改正に拠り、電子帳簿保存法施行規則が改正、スマホで領収書などをスキャン、保存する事が一定要件の下許容、国税関係帳簿書類電子保存が容易となった。今後、紙媒体一般電子化、其に伴う検索性向上、データ間紐付け進展の可能性があり、是等電子データ利用に拠る各種申告補助サービス、電子レシートに拠るペーパーレス連携が期待される。

 此処からは規制概要について述べていく。電子帳簿保存法は国税関係法に於ける特別法であり、所得税、法人税その他国税関係法に於いては、納税者が帳簿書類を紙媒体で備え付け、保存せねばならないとあるが、電磁的記録備え付け、保存を以って代替可能としている。此処でいう帳簿とは、仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳など、国税関係帳簿書類とは契約書、領収書などを其々指す(2条2項)。国税関係帳簿と国税関係書類を総じ国税関係帳簿書類と定義される(同2条2項)。
 抑の創設目的として、書面保存に要する負担軽減に於ける国民利便性向上を挙げており、電磁的記録備え付け、保存の方法としては、帳簿保存義務者が最初から一貫し電子計算機使用にて作成する場合と、一旦紙媒体にて保存された場合とに分けられる。前者に於いては、電子データ又はマイクロフィルムに拠る保存(4条1項、2項)、後者に於いてはスキャナにて紙媒体をスキャンしたデータを保存(4条3項)。

紙保存 (i)電子データ・COM保存(保存者が一貫して電子作成) (ii)スキャナ保存(紙→スキャナ)
種別 規定 可否 要件等 可否 要件等
帳簿 原則 所得148、法人126等 法4-1(承認制)
真実性・可視性の要件:訂正削除履歴等
×
書類 受領 原則 所得148、法人126等 特例
電帳法4-3(承認制)
真実性・可視性の要件:タイムスタンプ等
発行(控) 原則
所得148・法人126等
法4-2(承認制)
可視性の要件:検索機能 等
法4-3(承認制)
真実性・可視性の要件:電子署名等(H27改正後タイムスタンプ等)

 又、電磁的記録方法使用にて国税関係帳簿書類備え付け、保存する者は、前述方法と共に納税地に於ける所轄税務署長承認を受けねばならない(4条各項)が、是等方法に拠り、紙コスト削減、保存コスト、労力削減、検索性向上などメリットは大きい。

 現状の課題であるが、改竄の畏れなどに対し、電磁的記録備え付け保存に関し、厳格要件を課してきており、是をクリアするスキャナを用するなど手間暇が掛かっている。
 是等状況対応として、2015(平成27)年度及び2016(平成28)年度税制改正に拠り、電子帳簿保存法施工規則改正、スキャナ保存要件緩和が成され、其迄スキャナ形式が限定(原稿台一体、解像度一定以上、カラー階調)され、電子署名要求が成されるなど、利用を妨げてきた規則が散見されたが、改正に拠って緩和が成されたという事である。

 上述の課題を踏まえた規制緩和、修正動向を2015(平成27)年度及び2016(平成28)年度税制改正毎に記しておく。2015(平成27)年度税制改正に伴う規則改正に拠り、2015年9月30日以降に国税関係帳簿書類をスキャナ保存する旨申告した際の要件緩和についてであるが、改正に拠り、契約書、領収書などの国税関係書類に於いて、従来スキャナ保存対象は、記載金額3万円未満のものであったのに対し、金額に関わらず全てスキャナ保存対象となるなど範囲拡充が成され(規則3条3項)たが、詳細を下記に記す。

国税関係帳簿書類のスキャナ保存区分の改正

帳簿・決済関係書類 契約書・領収書等(3万円以上)及びこれらの写し 契約書・領収書等(3万円未満)及びこれらの写し 左記以外の書類【例】

  • 契約の申込書
  • 請求書
  • 送り状
検収書 ・見積書 ・注文書 等 ・納品書及びこれらの写し
2015年9月30日申請前 スキャナ保存対象外 スキャナ保存対象
 主な保存要件:

  1. 速やかに又は業務サイクル後速やかに入力(業務処理サイクル方式を採用する場合、承認が必要)
  2. 電子署名+タイムスタンプ+バージョン管理
2015年9月30日申請後 スキャナ保存対象外 スキャナ保存対象
 主な保存要件:

  1. 速やかに又は業務サイクル後速やかに入力(業務処理サイクル方式を採用する場合の承認が不要に)
  2. ユーザーID等+タイムスタンプ+バージョン管理

出所:国税庁 電子帳簿保存法関係パンフレット「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正)

主なスキャナ保存要件の緩和事項

事項 2015年9月30日申請前 2015年9月30日申請後
対象書類 契約書・領収書等のうち額面が3万円未満のもののみ 額面の基準を廃止
ただし、備付け・保存の適正な実施を確保するための規定を定め、これに基づき当該各事務を処理する体制整備が要求されることに
スキャナ保存の要件
  • 業務処理サイクル方式を採用する場合には承認が必要
  • 業務処理サイクル方式を採用する場合の承認が不要に
  • 電子署名が必要
  • 電子署名が不要に(そのかわり、ユーザーID等入力者に関する情報の保存が必要)
  • 書類の大きさ情報の保存が必要
  • 書類の大きさ情報の保存は不要に
  • カラー階調による読み取り
  • グレースケールも許容

出所:国税庁 電子帳簿保存法関係パンフレット「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正)

 更に2016(平成28)年度税制改正に於いて、スキャナに関し、原稿一体となったものに限定するという要件は廃され、デジカメ、スマホなどで領収書を収め保存が可能となったが、領収書、請求書などの国税関係書類に於いて、作成者、受領者が読み取り保存する際、作成、受領後、其の者が署名の上、3日以内のタイムスタンプ付しが要件とされている。
 2016年9月30日以降に行われた承認申請に於いて適応されるが、改正後要件にてスキャナ保存する際は、保存開始3ヶ月前の日迄に承認申請書提出を済ませねばならない事に留意を要する。