法務資金決済法における仮想通貨交換業

 FinTechを取り巻く規制について、引き続き資金決済法について述べていく。次は巷で紆余曲折賛否両論の仮想通貨である。
 もう既にご存じの方も多いと思われるが、2017年9月6日付日経新聞の記事にも掲載された「中国、ICO全面禁止」などは、中国国内のみならず、諸外国への影響も大きいであろう。

 我が国においては2017年4月の改正資金決済法に基づいて、法定通貨と仮想通貨の売買などを執り行う仮想通貨交換業が登録制とされ、仮想通貨サービスの注目は高まっている。
 顧客に対し、仮想通貨を販売する販売所や交換所、また顧客の売り、買い、各々の注文をマッチングさせる場を提供する取引所を営む際は改正資金決済法に基づいて、仮想通貨交換業登録が必要になる。

 近年のITの進展に伴い、インターネットを通じ電子的取引を行ういわゆる仮想通貨が登場。ビットコインなどのポピュラーなものから、2017年6月現在900以上にも及ぶ種類の仮想通貨が確認されている。
 仮想通貨は必ずしも発行者や管理者が存在せず、発行者の存在、中央集権的管理が成される前払式支払手段としての電子マネーの特徴とは一線を画する。また、移転が迅速かつ容易で、しかも匿名で利用できる点などマネーロンダリングに悪用されるリスクが国際的に指摘されている。
 2015年6月8日のG7エルマウ・サミットの首脳宣言において、仮想通貨や新たな支払手段の規制や金融の流れの透明性拡大の確保への更なる行動を取るなど名言。同月26日のFATFガイダンスにおいては仮想通貨交換所に登録、免許制を課し、顧客の本人確認義務などマネーロンダリング、テロ資金供与規制を課すべきと公表。G7各国で規制導入が急務となった。

 我が国においてはやはり、2014年当時世界最大規模を誇ったマウントゴックス破綻が話題を呼んだ事であろう。同社が実際に保有する資金やビットコインが顧客から預かっていたそれよりも大幅に減少していた事が明るみに出、利用者保護の観点からも制度的枠組みの構築が求められた。
 後に衆参両院の審議を経て2016年5月25日、資金決済法に新たな仮想通貨の章を新設した同法律が成立。2017年4月1日、改正資金決済法が施行された。仮想通貨の定義として、資金決済法2条5項および6項に要件が挙げられている。以下の通りである。

    1. 物品購入、サービス提供を受ける場合に、これらの対価の弁済の為に不特定の者に対して使用でき、かつ不特定の者を相手方として、購入及び売却ができるもの(これと相互に交換を行う事ができるものも含む)。
    2. 電子的に記録された財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。
    3. 法定通貨建て表示され、または法定通貨をもって債務の履行等が行われる通貨建て資産には該当しないもの。

 ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ネム等、またビットコインと相互交換可能なカウンターパーティコインなどは、上記三点に該当すると考えられる。
 対していわゆる電子マネー、ゲーム内通貨、ポイントなどについて、これらを使用できるのが、発行者との間で契約し、利用者に特定された形で表示された加盟店等に限定される場合は、1)の要件が満たされぬゆえ、仮想通貨に該当しない。また、国債、地方債、預金通貨、企業発行債券等 3)の要件が満たされぬゆえ、仮想通貨に該当しない。

 電子的に記録され、コンピュータなどを用いて移転できる”モノ”を個人または企業が配布する場合において不特定の個人または組織の間で取引が成さない場合は、その段階においては仮想通貨に該当しないが、後にその”モノ”の財産的価値を他の何者かが承認、不特定の個人または組織と取引を行うようになった場合、仮想通貨に該当する可能性がある。
 電子マネーやポイントなどは発行地点で性質が決定づけられ、規制対象か否かを決定できるが、仮想通貨は出現地点で性質が決まってないのが特徴であろう。例えば日本では”おかね”であり、タイでは”モノ”として扱われる点が最たるものである。
 いずれにせよ、事業登録者の増加と定義該当の判例がある一定量高まりを見せれば、定義のアウトラインもより明確になってくるのであるが。

 次に仮想通貨交換業の定義について、資金決済法63条の2では、交換業登録制の旨を記している。

    1. 仮想通貨売買または他の仮想通貨との交換
    2. 1の媒介、取次、代理
    3. 1,2に関し、利用者の金銭または仮想通貨管理

 顧客に対し、仮想通貨を販売する販売所、交換所またはATMで仮想通貨を販売する場合 1に該当する。
2に具体的定義は特に規定されていないが、俗に言う”媒介”というのは、他人の間に立ち、両者を当事者とする法律行為の成立に尽力する事実行行為を指す。”取次” ”代理”は自己の名をもって他人の計算あるいは他人の為に法律行為を行う行為を指す。
 顧客の売り注文、買い注文をマッチングさせる取引所などは2に該当、顧客の金銭、仮想通貨を管理するサービスなどは1,2に該当する。
 仮想通貨のウォレットを開設するのみで、法定通貨との交換は行わず、管理のみを業とする事業者1~3のいずれに当てはまらないので規制対象から外れる。

資金決済法63条の5に仮想通貨交換業登録要件が記されている。

    1. 株式会社または外国仮想通貨交換業者(国内に営業所を有する外国会社で国内における代表者を置くもの)であること。
    2. 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有すること。
    3. 規定を順守するために必要な体制の整備が行われていること
    4. 他の仮想通貨交換業が現に用いている商号もしくは名称と同一の商号、もしくは名称または他の仮想通貨交換業者と誤認される恐れのある商号もしくは名前を用いないこと
    5. 他に行う事業が公益に反しないこと
    6. 法人及び役員が法に定める欠格要件に該当しないこと。

 1の外国仮想通貨交換業者は、外国法令規定により同種の登録(登録に類する許可その他の行政処分を含む)を受け、仮想通貨交換業を行う者を言う。外国で同様のライセンスを受けている外国会社は国内に株式会社を持たなくとも、国内に営業所と代表権を置く事で登録可能となる。
 2については、高度なセキュリティ対策を講じたシステムを構築などの最低限の初期投資、事業維持のための一定財産的基礎が必要である事を考慮しつつ、イノベーション推進の観点から過度な規制水準にならぬよう配慮された結果、内閣府令では資本金額は1,000万円以上かつ純資産額が負の値でない事が要件とされた。

 続いて行動規制についてであるが、登録をした交換業者には利用者保護に関する措置、情報安全管理措置を講じる義務が課せられる(資金決済法63条の8〜63条の10)。利用者保護に関する措置としては、誤認防止説明(仮想通貨は法定通貨との交換が必ずしも保証されていない等)。利用者に対する情報提供(取引内容手数料、苦情連絡先等)。金銭等受領時における書面交付(電磁的方法も含む)。内部管理(社内規定の策定、従業員研修実施等)がある。その他利用者が預託した金銭、仮想通貨の分別管理が義務付けられている。
 分別管理においては、公認会計士または監査法人が外部監査を行うことを義務付けている(資金決済法63条の12)。
 仮想通貨交換業者が提供するサービス形態をはじめ、世界各国の仮想通貨に対する姿勢(冒頭で述べた通り中国ではイニシャルコインオファリング(ICO)全面禁止になった)など、今後急転直下の変化を伴うと思われる。

 仮想通貨交換業者に対し、法令に基づく自主規制団体の設立を可能にすると共に、他の金融関連業同様、金融ADR(金融分野における裁判外紛争解決制度)への対応を義務付けている(資金決済法63条の12)。
 仮想通貨交換業者に対する監督。内閣総理大臣から委任を受けた財務局長及び財務支局長は、報告徴求立入検査、業務改善命令、業務停止命令、登録取り消しを行う権限を有している(資金決済法63条の15〜63条の17)。
 そして、仮想通貨交換業者は帳簿書類作成保存、事業年度ごとの報告書、管理する利用者の金銭額や仮想通貨数量、その他の管理における報告書を一定期間ごとに作成、提出せねばならない(資金決済法63条の13〜63条の14)。

 最後に重要な点として仮想通貨交換業者は犯罪収益移転防止法上、特定事業者に指定されている。取引時確認、確認記録並びに取引記録作成、疑わしい取引の届出、体制整備(社内規則整備、研修実施、総括管理者選任等)などが義務付けられている(犯罪収益移転防止法4,6,7,8,10条)。
 なお、取引時確認を行う必要がある特定取引内容は政令で定められており、ウォレット開設など、継続的契約の締結時と200万円を超える仮想通貨売買時10万円を超える仮想通貨移転時に取引時確認が必要となる(犯罪収益移転防止法施行令7条1項1号)。