国税通則法国税通則法における国税納付義務確定 其の二 更正の請求

1.更正の請求

(1)更正の請求の意義

更正請求は、納税者が納税義務により、一旦確定した税額が過大である事等を知った時などに、税務署長に対し自己に有利に変更すべき事を請求するもので、この手続は、税額等変更請求権行使する手続にとどまり、それ自体が税額等を是正し確定させる事を意味するものではない。

(2)修正申告との違い

更生請求は、自ら行った申告内容を自己の不利益に変更し、然も先の申告にかかる税額等が、自動的に変更される修正申告とは異なる。
この様に更生請求を修正申告の効果に差異を設ける理由は、更生請求に対し、税額等を確定させる変更権を与えた場合、国税徴収処分安定性が得られぬ上、徴税回避のおそれもある為である。

(3)更生請求制度の主要意義

更生請求制度は元来、納税者自らの申告により確定させた税額が過大、還付金相当税額が過少である事などを法定申告期限後に気付いた場合に、納税者側からその変更、是正の為必要な手段をとる事を可能ならしめ、その権利救済に資する事とするものである。
即ち申告にかかる税額等の変更については、先ず更正請求を行い、これに対し請求理由なしとする税務官庁の処分があった場合に、その処分内容に不服があれば、再調査請求、審査請求又は起訴により争う道を開いている。

2.更正の請求の制度

更正請求には
① 納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等に誤りがある為にするもの(通23①)
② 後発的事由により課税標準等又は税額等の計算の基礎に変動が生じた為にするもの (通23②)
とがある。

3.更正の請求の内容と期間

(1)通常の更正の請求

納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準若しくは税額等(更正されている場合は、更生後の計算が、法律の規定に従っていなかった事又はその計算に誤りがあった事により、

  1. ① 納付すべき税額が過大
  2. ② 純損失など所謂赤字金額が過小又は金額の記載がない
  3. ③ 還付金に相当する税額が過小又はその税額の記載がない

などの場合は、そのかかる国税の法定申告期限から五年以内に限り、税務署長に対し、その申
告にかかる課税標準等又は税額等につき、更生請求できる。

(2)後発的事由に基付く更正の請求

納税申告書を提出した者又は決定を受けた者は、通常の更正請求ができる期間後においても、次の事由が生じた事により、申告にかかる税額等が過大となった場合などには、例外的に所定の期間内において更正請求が認められている(通23②、通令6)。

尚通常の更正請求期間内は、通則法第23条第1項の更正請求によるべき事となる(通23②括弧書)。

4.更正の請求ができる場合

更生請求は申告内容に誤りがある場合の全てについて認められる訳ではなく、例えば課税標準額が過大であってもその理由のみでは更正請求はできず、納付すべき税額が一定の理由に基付き過大であっても初めて更正請求が認められるという場合に、前提条件が定められている。下記に記す。

更正請求の可否が争われた裁判例をいくつか記しておく。
認められた事例としては

  • 所得税確定申告において、措置法26条1項に基付く所謂概算経費により、事業所得の金額を計算していた場合、修正申告をするに当たり確定申告における計算誤りを是正する為、所謂実額経費に変更する事が許されるとした(最三判平成2.6.5判時1355号25頁)。
  • 法人税関係法令の解釈誤りないし読違いにより所得税税額控除金額を過少に計算し、その結果、法人税額を過大に申告したとして成された更正請求が、法人税法68条3項の趣旨に反する事はできないとされた(最二判平成21.7.10民集63巻6号1092頁)。
  • 法人確定申告において、外国税額控除金額を誤って過少に記載し、それにより法人税額が過大になったとして更正請求が認められた(福岡高判平成19.5.9税資257号順号10708)。認められなかった事例として
  • 措置法26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)1項の適用を選択して確定申告した後、実額による計算の方が税額が少なくて済んだ事に気付いたという場合、更正請求理由に当たらぬとされた(最三判昭和62.11.10判時1261号54頁)。
  • 消費税仕入税額控除について、一括比例配分方式により確定申告した後、計算方法の誤りを理由に個別対応方式により計算を求める更正請求は許されないとされた(福岡地判平成9.5.27判時1648号60頁)。
  • 土地譲渡所得について確定申告した後、当該土地について措置法31条の2(優良住宅地の特例)の適用を求め成された更正請求は認められぬとされた(千葉地判昭和62.12.18判時1284号60頁)。

(1)当初申告要件廃止

当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な措置について、下記①②の何れにも該当しない措置については、当初申告要件廃止し、所要書類を添付する事により、事後的に更正請求が認められる事とされた。

①インセンティブ措置

これは「設備投資にかかる特別償却」の様な特定の政策誘導を図る事を目的とする「インセンティブ措置」について、更正請求を含め実質的にその事後的な選択適用を認める事は、「税負担軽減を通じ、政策目的達成を図る」との当該措置の趣旨そのものを没却するおそれがある為である。

②利用するか否かで、有利、不利が生ずる操作可能な措置

これは各種「引当金」の様な「納税者が利用するか否かで、有利、不利が生ずる措置」について更正請求を認める事は、実質的に事後的な事情を踏まえ最も納税者有利とする事ができる選択権を納税者自身に付与するもので、課税公平が確保できなくなるおそれがある為である。

(2)当初申告要件廃止具体例 給与所得者の特例支出控除の特例

所得税法改正により、確定申告書、修正申告書又は更正請求書にその適用を受ける旨及び 特定支出額の合計額の記載や特定支出に関する明細書や証明書類の添付がある場合について適用を受ける事ができるとされ、結果事後的に更正請求書が認められる事となった(所得税法57の2③)。

(3)控除額制限撤廃

益金不算入、控除税額はその金額として当初の確定申告書に記載された金額を限度とする旨の定めについて、当初申告で計算誤りがある場合でも、更正請求により控除額制限を超え増額はできないとされていたが、近年更正請求により控除額増額を認めてよい場合がある旨の最高裁判決が出た事もあり、更正請求により、適正に計算された正当額迄当初申告時の控除額増額が可能となった。

(4)控除額制限撤廃具体例 受取配当等の益金不算入制度

法人税改正により、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金不算入額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り適用可能とされ、その適用を受ける事ができる金額は、当該書類に記載された金額を限度とするとされた(法人税法23⑧)。

参考として法人税所得税額控除に関する判決を記しておく。
本件更正請求は、所得税額控除制度の適用を受ける範囲を追加的拡張する趣旨のものでないから、法人税法68条3項の趣旨に反すると言う事はできず、上告人が本件確定申告において控除を受ける所得税額を過少に記載した為、法人税額を過大に申告した事が、国税通則法23条1項1号所定要件に該当する事も明らかである(最二判平成21.7.10民集63巻6号1092頁)。

(5)対象となる措置

更正請求が認められる事となった上記(1)(2)の具体的に対象となる措置例を記す。

5.更正の請求の手続等

(1)更正請求書提出

更正請求をする者は、その請求にかかる更正前、更正後の課税標準等又は税額等、請求理由、請求するに至った事情の詳細その他参考となる事項を記載した「更正請求書」を税務署長に提出せねばならない(通23③)。

(2)更正の請求にかかる証明書類添付義務

更正請求する者は、請求する理由を証明する趣旨を明確化する共に、効率的税務執行確保の観点から、その理由の基礎となる「事実を証明する書類」を添付せねばならない(通令6②)。

添付に必要なものとして

  1. ① 課税標準たる所得が過大である事その他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものである場合は、その取引記録に基付きその理由の基礎となる事実を証する書類
  2. ② ①以外のものである場合、その事実を証する書類

参考迄に更正請求に関する立証責任に関し、「更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟にあっては、納税者において確定した申告書の記載が真実と異なる事につき立証責任を負うものと解するのが相当である」(東京高裁平成14.9.18訟月50巻11号3335頁、福岡高判平成16.4.27税資254号9639頁も同旨)の判示が成されていたが、更正請求書への書類添付については、「右施行令は「添付するものとする」と規定し「添付しなければならない」(略)との規定の仕方もしていない事(略)を考慮すると国税通則法施行令6条2項に規定する「事実を証明する書類」の添付は更正請求の方式と解すべきでなく、この添付のない更正請求であってもそれを理由に請求を却下する事はできないと解すべきである」(大阪地判昭和52.8.2行集28巻8号808頁)との判事も成された所である。

(3)内容虚偽の更正請求書提出に対する処罰規定

更正請求手続を利用した悪質な不正還付請求を未然に防止し、以て適正且つ円滑な税務行政確保する観点から、故意に偽りの記載をした更正請求書を提出する行為について、処罰規定が
設けられている(通127①)。
本罰則は飽く迄「故意に偽りの記載をした更正請求書を提出する行為」を処罰するものであり、過失犯については処罰の対象とならない。

参考迄に、従来から虚偽更正請求を行い、実際に不正に税額還付を受けた場合は、所謂脱税犯として処罰行為とされてきた。他方例えば故意に偽りの記載をした「法定調書等」を税務署長に提出する行為は、虚偽法定調書等提出罪(秩序犯)として処罰する事とされていたが(所得税法242五等)、故意に偽りの記載をした更正請求書を提出する行為は、処 罰対象外となっていた為、平成23年改正で創設された。

(4)更正の請求に対する処理

更正請求があった場合、税務署長はその請求にかかる課税標準又は税額について調査し、その調査に基付き減額更正するか、又は更正すべき理由がない旨を通知する(通23④)。

尚この様な処理が相当な期間を経過しても何ら処理が成されぬ場合は、請求書は不作為についての不服申立てができる(通80、行審3、49等)。

(5)更正の請求の効果 徴収の猶予

更正請求があった場合でも、先の納税申告によりその請求にかかる既に確定した税額の納付義務は存続している。従って税務署長等は、その請求にかかる納付すべき国税(滞納処分費含む)の徴収は、原則猶予されない。
但し、請求内容の正当性が一見明白である等相当理由があると認められる時は、その国税の全部又は一部の徴収を猶予できる(通23⑤)。