国税通則法国税通則法における犯則事件の調査及び処分其の二 犯則事件の調査

1.任意調査

・質問、検査又は領置

国税庁等の職員は、国税に関する犯則事件を調査する為必要がある時は、犯則嫌疑者等に対し出頭を求め、犯則嫌疑者等に対し質問し、犯則嫌疑者が所持し若しくは置き去った物件を検査し、又は犯則嫌疑者が任意で提出し若しくは置き去った物件を領置できる(通131①)。
当該職員は領置した時は、それを明日にしておく為に領置物件を封印し、又はその他の方法により領置した事を明らかにせねばならない(通令44)。

・照会

当該職員は犯則事件調査について、官公署又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求める事ができる(通131②)。

2.強制調査

・臨検、捜索又は差押え

当該職員は犯則事件を調査する為に必要がある時は、その所属官署所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官が予め発する許可状により臨検、犯則嫌疑者の身体、物件若しくは住居その他の捜索、証拠物若しくは没収すべきと思料するものの差押え又は記録命令差押えができる。
但し参考人の身体、物件又は住居その他の場所については、差し押さえるべき物件の存在を認めるに足る状況にある場合に限り捜索できる(通132①)。
当該職員は差押え物件に封印をし、又はその他の方法により、差押え又は記録命令付差押えをした事を明らかにせねばならない(通44)。

(1)記録命令付差押え

当該職員は裁判官発する許可状により、電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録、又は印刷させた上でその記録媒体を差押えできる(通132①)。

(2)接続サーバ保管の自己作成データ等の差押え

差押え物件が電子計算機である時は当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であり、当該電子計算機で作成、変更した電磁的記録又は当該電子計算機で変更、消去できるとされる電磁的記録を保管する為に使用されていると認めるに足る状況にある者から、その電磁的記録を当該電子計算機又はその他の記録媒体に複写した上で、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差押えできる(通132②)。

(3)許可状の請求等

当該職員は許可状請求する場合において、犯則事件が存すると認められる資料を提供せねばならない(通132④)。
この請求があった場合、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官は、犯則嫌疑者の氏名、名称、罪名並びに臨検すべき物件 若しくは場所、模索すべき身体、物件若しくは場所、差押えすべき物件は記録させ、若しくは印刷すべき電磁的記録及びこれを記録させ、若しくは印刷させるべき者並びに請求者官職氏名、有効期間、その期間経過後は執行着手する事ができずこれを返還せねばならない旨、交付年月日及び裁判所名を記載し、自己記名押印した許可状を当該職員に交付せねばならない(通132⑤)
又上記(2)においては、許可状に上記規定する事項の他、差押えすべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載せねばならない(通132⑥)。

3.通信事務を取り扱う者に対する差押え

(1)郵便物等の差押え

当該職員は犯則事件調査の為、必要であれば、許可状の交付を受け、犯則嫌疑者から発し、又犯則嫌疑者に対し、発した郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基付き通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものを差押えできる(通133①)。

(2)発信人等への通知

当該職員は上記(1)の規定に該当しない郵便物、信書便物又は電信についての書類で法令の規定に基付き通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するものについては、犯則事件に関係があると認めるに足る状況があるものに限り許可状の交付を受け、これを差し押さえできる(通133②)。

(3)当該職員は上記(1)(2)の規定により処分した場合において、その旨を発信人、受信人に通知せねばならない。但し通知により犯則事件の調査が妨げられるおそれがある場合はこの限りではない(通133③)。

4.通信履歴の電磁的記録の保全要請

当該職員は差押え、記録命令差押えする為必要であれば、電気通信を行う為の設備を他人の通信の様に供する事業を営む者等に対し、その業務上記録している通信履歴の電磁的記録の内必要な物(電気通信送信元、送信先、通信日時等)を特定し、30日(特に必要があり延長する時は60日)を超えない期間を定め、消去せぬ様書面で求める事(この場合において必要であれば、みだりにこれらに関する事項を漏らさぬ様求める事)ができる(通134)。

5.現行犯事件の臨検、捜索、差押え

当該職員は間接国税(賦課課税方式が適用される課税貨物に課される消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税)に関する犯則事件について、現に犯則を行い終わった者がある場合において、その証拠となると認められるものを募集する為必要であり且つ急を要し、許可状交付不可能な時は、その犯則現場において、臨検、捜索、差押えできる(通135①)。
又当該職員は間接国税に関する犯則事件について、現に犯則に供じた?物件、犯則により得た物件を所持し、又は顕著な反則の跡があり犯則を行ってから間がないと明らかに認められる者がある場合において、その証拠となると認められるものを募集する為必要であり且つ、急を要し許可状交付不可能な時、その者の所持する物件に対し、臨検、捜索、差押えできる(通135②)。

6.電磁的記録にかかる記録媒体差押えに代わる処分

差押えすべき物件が電磁的記録にかかる記録媒体である時は、当該職員はその差押えに代えて、下記の処分ができる(通136)。

  1. ① 差押えすべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写、印刷、移転した上、当該他の記録媒体を差押えする
  2. ② 差押えを受ける者に差押えすべき記録媒体に記録した電磁的記録を他の記録媒体に複写、印刷、移転させた上、当該他の記録媒体を差押えする

7.臨検、捜索又は差押え等に際しての必要な処分

当該職員は臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えをする為必要であれば、錠をはずし封を開きその他必要な処分ができる(通137)。

8.処分を受ける者に対する協力要請

臨検、差押えすべき物件が電磁的記録にかかる記録媒体である時、当該職員は臨検、捜索、差押えを受ける者に対し、電子計算機の操作その他必要な協力を求める事ができる(通138)。

9.許可状の提示

臨検、捜索、差押え、記録名付差押えの許可状について、これら処分を受ける者に提示さらない(通139)。

10.身分証明書の提示

当該職員は質問、検査、領置、臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えをする時、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があった時は、これを提示せねばならない(通140)。

11.警察官の援助

当該職員は臨検、捜索、差押え、記録命令差押えをするに際し必要であれば警察官の援助を求める事ができる(通141)。

12.臨検等における立会い

当該職員は人の住居、人の看守する邸宅若しくは建造物その他の場所で臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えをする時は、その所有者等を立ち会わせなければならない(通142①)。
尚これら所有者等を立ち会わせる事ができない時は、その隣人で成長に達した者、その地の警察官、地方公共団体職員を立ち会わせなければならない(通142①)。
現行犯事件の臨検、捜索、差押えする場合において急を要する時は上記の立会いは要さない(通142③)。
女子の身体について捜索をする時は成年女子を立ち会わせなければならない。但し急を要する場合はこの限りではない(通142④)。

13.領置目録等の作成等

当該職員は領置、差押え、記録命令付差押えをした時は、その目録を作成し、その所持者等に謄本を交付せねばならない(通143)。

14.領置物件等の処置

(1)保管

運搬、保管に不便な領置物件、差押え物件、記録命令付差押え物件は、その所有者、所持者その他当該職員が適当と認める者に、その承諾を得て保管証を徴して保管させる事ができる(通144①)。
この場合旨を領置、差押え、記録命令付差押えの際における当該物件の所持者に通知せねばならない(通令48①)。

(2)公売

国税庁長官、国税局長、税務署長は、領置、差押え物件が腐敗し変質した時、又はそのおそれがある時は、次に掲げる事項を公告後、これを公表に付し、その代金を供託できる(通144②)。

15.領置物件の還付等

(1)留置物件等の還付

当該職員は領置、差押え、記録命令付差押えの物件について、留置の必要がなくなった時、その返還を受けるべき者に還付 せねばならない(通145①)。

(2)留置等の還付する事ができない場合

国税庁長官、国税局長、税務署長はこれら物件の返還を受けるべき者の住所等が不要などの事由により、これを還付できない場合、その旨を公告した上(通145②)で、公告の日から6月を経過して尚還付請求がない時は、これら物件は国庫帰属となる(通145③)。

16.移転した上差押えした記録媒体の交付等

当該職員は通則法136条(電磁的記録にかかる記録媒体の差押えに代わる処分)の規定により電磁的記録を移転し、又は移転させた上差押えした記録媒体について留置の必要性がなくなった場合において、差押えを受けた者と当該記録媒体の所持者、所持者保管者とが異なる時は、当該差押えを受けた者に対し、当該記録媒体を交付し、又は電磁的記録の複写を許さなければならない(通146)。

17.鑑定、通訳、翻訳の嘱託

当該職員は犯則事件調査の為必要であれば、学識経験を有する者に領置、留置、差押え、記録命令付差押えの物件につき鑑定を嘱託し、又は通訳、翻訳を嘱託できる(通147①)。
尚鑑定は裁判官の許可を受け、鑑定にかかる物件を破壊できる(通147②)。

18.臨検、捜索、差押え等の夜間執行制限

強制捜査である臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えは、一定の場合を除き許可状に夜間でも執行できる旨の記載がない場合は、日没から日出迄の間はできない(通148①)。
しかし日没前開始の場合に必要と認められる時は日没後迄継続できる(通148②)。
因みに夜間執行制限を受けない国税(通令51)として、消費税法2条1項11号に規定する課税貨物に課される消費税、酒税、石油ガス税。

19.処分中の出入り禁止

当該職員は質問、検査、領置、臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えをする間は、何人たりとも許可を受けずにその場所への出入りを禁ずる事ができる(通149)。

20.執行を中止する場合の処分

臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えの許可状執行中止の場合、必要であれば執行が終わる迄の間その場を閉鎖、又は看守者を置く事が出来る(通150)。

21.捜索証明書の交付

捜索をした際、証拠物、没収すべき物件がなかった時は、捜索を受けた者の請求に応じて、捜索許可証を交付せねばならない(通151)。

22.調書の作成

(1)質問の調書

質問にかかる調書については、質問を受けた者に閲覧、読み聞かせ、内容変更等申立てがある時、その陳述を調書に記載せねばならない(通152①)。具体的には質問した時

  1. ① その調書を作成
  2. ② 質問を受けた者に閲覧、読み聞かせ
  3. ③ 誤りがあるか否かを問い
  4. ④ 質問を受けた者が増減変更申立てをした時はその陳述を調書に記載
  5. ⑤ 質問を受けた者と共に署名押印せねばならない。この場合、質問を受けた者が署名押印せず、又はできない時、その旨付記すれば足る。

(2)検査、領置の調書

当該職員が検査、領置をした時、調書作成し、これに署名押印せねばならない(通152②)。

(3)臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えの調書

当該職員が臨検、捜索、差押え、記録命令付差押えをした時、調書作成し、立会人に示し、立会人と共に署名押印せねばならない。
但し立会人が署名押印せず、又はできない時はその旨付記すれば足る(通152③)。

23.調査の管轄及び引き継ぎ

  1. ① 犯則事件調査は、国税庁当該職員、事件発見地を所轄する国税局、税務署当該職員が行う(通153①)。
  2. ② 国税庁当該職員が集取した間接国税に関する犯則事件の証拠で重要なものは、所轄国税局当該職員に、その他のものは所轄税務署当該職員に其々引き継がねばならない(通153②)。
  3. ③ 国税局当該職員が集取した犯則事件の証拠は、所轄税務署当該職員に引き継がねばならない。但し重要証拠についてはこの限りではない(通153④)。
  4. ④ 税務署当該職員が集取した犯則事件重要証拠、所轄国税局当該職員に引き継がねばならない(通153④)
  5. ⑤ 同一犯則事件が二以上の場で発見された時、各発見地において集取された証拠は、最初の発見地を所轄する税務署当該職員が引き継がねばならない。但しそれが重要証拠であれば最初の発見地所轄の国税局当該職員が引き継ぐ(通153⑤)。

24.管轄区域外における職務執行等

国税局、税務署当該職員は犯則事件調査に必要があれば、所属する国税局、税務署管轄区域外において、その職務を執行できる(通154)。
又国税局長、税務署長はその管轄区域外において犯則事件調査の必要があれば、その地の国税局長、税務署長に嘱託できる(通154②③)。