国税通則法国税通則法における不服審査及び訴訟其の五 訴訟

国税通則法における不服審査及び訴訟其の五
訴訟

訴訟については通則法第8章第2節において、行政事件訴訟法との関係(通114)、不服申立ての前置等(通115)、及び原告が行うべき証拠の申出(通116)の規定を置いているだけで、具体的手続についての定めはない。
しかし租税にかかる訴訟を理解するには、不服審査を経て提起される所謂租税訴訟(税務争訟)についての理解は不可欠である。
ここでは通則法の上記規定も含め、国税にかかる租税訴訟を理解する上での基本的手続及びその主な類型等について概説していく。

1.租税訴訟とその手続

訴訟は、一般に民事、刑事、行政、及び人事に分類され、租税法律関係にかかる訴訟である租税訴訟は、この類型からすると次の様に通常の民事訴訟に属するものと行政訴訟に属するものとがある。
因みに実務上、租税訴訟を租税の賦課、徴収という観点から課税訴訟と徴収訴訟に大別する事がある。
課税訴訟の大部分は行政訴訟であるのに対し、徴収訴訟は民事訴訟がその多くを占めている。
又租税訴訟はその係属件数からしても行政事件である課税処分取消請求訴訟などが多いという状況にある。

民事訴訟は訴えの内容から

  1. ① 特定の権利は法律関係の存在を否める「確認の訴え」
  2. ② 原告の被告に対する特定の給付請求権の存在を訴える「給付の訴え」
  3. ③ 特定の権利又は法律関係が一定の法律要件の存在する事により、判決で発生、変更又は消滅すべき事を求める「形成の訴え」

に分類されるが、上図の租税訴訟に属するものの例として掲げる訴訟は、この様な訴えの何れかに該当する事になる。又行政訴訟とは訴訟物たる権利又は法律関係が公法上のものである事件(行政事件)に関するものであるが、租税訴訟に属するものの例としては上図の訴訟がある。

ところで行政事件の訴訟手続きは行政事件訴訟法に定められているが、同法に定めがない事項については民事訴訟の例による事とされている(行訴7)。
租税訴訟の内、国税に関する法律に基付く処分に関する訴訟(行政訴訟のの類型に属するもの)にあっては、通則法や他の国税に関する法律に特段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法その他一般の行政訴訟に関する法律の定める所によるとされている(通114)が、この特段の定めには、前述の不服申立前置等(通115)、証拠申出の順序に関する規定(通116)の他、執行停止に関する徴収法90条3項の規定など僅か しかない。
この為、国税に関する法律に基付く処分に関する訴訟の手続は、民事訴訟の手続と類似している。

2.租税訴訟の整理

租税訴訟の内、大きなウェイトを占める行政訴訟は、行政事件訴訟法上、次の様に抗告(行訴3)、当事者(行訴4)、民集(行訴5)、機関(行訴6)に分類される。
抗告訴訟は更に「処分取消し訴え」「裁判取消し訴え」「無効等確認の訴え」「不作為の違法確認の訴え」「義務付けの訴え」「差止めの訴え」に細分されるが、「処分取消しの訴え」と「裁決取消しの訴え」を併せ一般的に「取消訴訟」といわれる。

①処分の取消しの訴え(行訴3②)

行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟をいう。
税務署長が行う更正処分や加算税の賦課決定処分の取消しを求める訴訟がその典型である。租税訴訟の大部分がこれに当たる。

②裁決の取消しの訴え(行訴3③)

不服申立ての決定又は裁決取消しを求める訴訟をいう。
この訴えは審査請求についての裁決又は異議申立てについての決定手続の固有の瑕疵を違法とするものに限られ(行政10②)、原処分である更正処分等の違法を理由とする事ができない。
尚固有の瑕疵とは、裁決や決定の主体、手続、形式等の違法事由をいう。

③無効等確認の訴え(行訴3④)

処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
課税処分が無効である事を前提とするものである為、取消訴訟と異なり、出訴期間(行訴14)の制限が付されておらず(行訴38)、不服申立前置の適用もない。
課税処分の無効を求める多くの裁判例において、一般の行政処分同様その瑕疵が「重大且つ明白」な場合のみ認められる(最二判昭和37.2.23訟月8巻4号710頁)。

④不作為の違法確認の訴え(行訴3⑤)

行政庁が私人からの法令に基付く申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしないという不作為についての違法の確認を求める訴え。
行政庁が申請にかかる処分又は裁決をすれば、その処分又は裁決が申請の目的に叶うと否とにかかわらず不作為による違法状態は解消し、訴えの利益が失われる。

⑤義務付けの訴え(行訴3⑥)

行政庁が一定の処分又は裁決すべき事を求める訴えをいい、下記の2類型に大別できる。

イ.非申請型

行政庁が一定の処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これがされない(ロに掲げるものを除く)この訴えは一定の処分がされない事により重大な損害が生ずるおそれがあり且つ、その損害を回避する為他に適当な方法がない時に限り提起できる(行訴37の2)。

ロ.申請型

行政庁に対して一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基付く申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにもかかわらずこれがされない
この訴えは不作為の違法確認の訴え、取消訴訟又は無効等確認の訴えと併合して定期せねばならない(行政37の3)。

⑥差止めの訴え(行訴3⑦)。

行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにもかかわらず、これがされようとしている場合において、行政がその処分又は裁決をしてはならない事を求める訴え。
この訴えは、裁判所が事前に違法性を判断するものである所から、事前救済を求めるに相応しい救済必要性がある事を求められる。

・過誤納金還付請求訴訟

過納金又は誤納金の還付を求める訴訟で、過納金とは、有効な申告又は課税処分に基付いて納付された租税で納付の時点で適法であったものが、後に減額更正等により法律上の原因を失い超過納付となった租税。
従って過納金還付請求を行う場合、先ずその基礎となっている処分等の取消しを求める必要がある。
誤納金とは、無効な申告又は課税処分に基付いて納付された租税の様に、納付の時点から法律上の原因を欠いていた租税であり、納税者は国を相手に直ちに還付請求できる。

以上行政訴訟に属するものを記したが、前述通り租税訴訟には民事訴訟に属するものとして下記の訴訟がある。

・国家賠償請求訴訟

税務職員の違法な税務調査により受けた損害の賠償(給付)を国に求める訴訟。純粋な民事訴訟である。

・争点訴訟

行政処分が無効である事を理由して私法上の請求をする訴訟(行政45)。
行政処分の効力が争点となる為この様に称されている。
滞納処分が無効である事を理由に公売財産返還を求める訴訟などがこれに当たる。

・その他の租税訴訟

以上の他、国が原告となり訴訟提起する差押取立訴訟、配当異議訴訟など、国が被告となる差押登記及び抵当権設定登記等の抹消登記手続訴訟などがある。

3.訴訟の流れ

租税訴訟における訴えの提起から判決迄の第一審の訴訟の流れは概略次の通り。
尚この様な訴訟の流れは民事、 行政事件で大きく変わるものではない。

(1)訴状の提出

訴えの提起は訴状を裁判所に提出して行う(民訴133①)。
訴状には当事者及び代理人、請求の趣旨及び原因など必要な記載事項が求められる(民訴133②)。

(2)訴状の審査と送達

訴状の審査により訴状が適式であると認められると、裁判所はその訴状の謄本(副本)を被告に送達する(民訴138①、民訴規則58①)。
この送達の際、裁判所は通常、訴訟の審理を始める為の第一回口頭弁論期日を指定し、原告被告双方を呼び出す「呼出状」を同時送付する(民訴139、民訴規則60①)。

(3)答弁書作成と提出

被告に訴状が送達されると、被告は「答弁書」を作成、提出する。
答弁書も準備書面の一つであるので、請求の趣旨に対する答弁、訴状に記載された事実に対する認否など、その記載事項は法定されている(民訴規則80.53④)。

尚原告の訴えが違法でない場合即ち後述する訴状要件を満たしていない場合は、上記請求の趣旨に対する答弁の前に「訴えの却下の申立て」を行う。

(4)口頭弁論

当事者が口頭言論期日に口頭を以て裁判所に対する訴訟資料の提出をいい、「当事者のする申立て」「法律上及び事実上の主張」「証拠の申出」などがある。裁判所は訴訟の審理が進行し、訴えに対する結論的判断が可能になるか、当事者双方の主張、立証が整うなどその判断の為の資料が出尽くしたと判断すると、弁論終結し終局判決する(民訴243)。
尚通則法116条は、行政事件訴訟法3条2項の「処分取消しの訴え」において、租税訴訟の特殊性を踏まえ、原告の証拠の申出等に関する規定を設けている。

(5)判決言い渡し

判断は当事者への言い渡しにより効力を生じる(民訴250)。

4.訴訟要件

租税訴訟において先ず問題となる他の訴訟の場合同様「訴訟事件」である。
訴えの内容である請求の当否について、裁判所の実質的な審理判断を受け判決を受ける為に具備していなければならない事実をいう。
訴訟要件ヲ満たしているか否かは、訴訟類型に応じ異なり、最終的に裁判所が判断する。
租税訴訟の中心を占める課税処分の取消訴訟における訴訟要件について下記概説していく。

(1)訴えの利益

裁判所の実質的な審理を受ける為には、次の様に法律の定める一定の手続に従い公権的解決を図るべき利益ないし必要性がなければならない。

・広義の訴えの対象

取消しを求める対象が「行政庁の処分その他の公権力行使に当たる行為」である事が必要(行訴3②)。
従って例えば更正処分、滞納処分等は、行政処分として取消訴訟対象となるが、申告納税方式における確定申告は、行政処分ではないので、取消訴訟の対象とならない。

・原告適格

取消請求の当否について、判決を受けるだけの法的利益ないし必要性がある事が求められる(行訴9括弧書)。

(2)被告適格

課税処分取消しの訴えは、当該処分した行政庁を、又裁決取消しの訴えは、当該裁決した行政庁を被告として提起せねばならない。
もっとも平成16年行政法改正により、取消訴訟の被告は「行政庁の所属する国又は公 共団体」(行訴11①)となり、その結果「国」を被告とすればよい事となった。

(3)裁判管轄

裁判所からみて裁判権を行使できる権限の範囲を管轄権というが、訴えは管轄のある裁判所に提起せねばならない(行訴12①)。
上記(2)で述べた様に取消訴訟においては「国を被告とされた事から、行政庁の所在地を管轄する地方裁判所の他、国の書通裁判籍を管轄する(民訴4⑥、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1)東京地方裁判所に提起する事ができる。

(4)不服申立前置

行政事件訴訟は「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をする事ができる場合においても、直ちに提起する事を妨げない」(行訴8①)として、原告の自由な選択に任せているが、課税処分取消しの訴えは、他の行政処分にかかるものと異なり、原則、所定の不服申立手続を経た後でなければ提起できない(行政8①但書、通115①)

(5)出訴期間

取消訴訟は処分又は裁決のあった事を知った日から6月以内に提起せねばならない(行訴14①)。
「知った日」とは、処分又は裁決の存在を現実に知った日をいう(最二判昭和27.11.20民集6巻10号1038頁)。
又処分又は裁決のあった事を知ったか否かにかかわらず「処分又は裁決の日」から一年経過すれば取消訴訟提起できない(行訴14②)。
前者を主観的出訴期間、後者を客観的出訴期間といい、これらの期間は、主観的出訴期間の場合は処分又は裁決があった事を知った日、客観的出訴期間の場合は処分又は裁決の日の翌日から起算される(民訴95①、民138、148本文)。
尚出訴期間経過した場合でも「正当な理由」っがある時は救済される(行訴14①及び②但書)。