国税通則法国税通則法における不服審査及び訴訟其の四 審査請求

目次

1.審査請求の概要

審査請求とは、税務署長が行った処分に不服のある方が、その処分取消しや変更を求め国税不服審判所に対し不服を申し立てる制度であり、その審査請求には

  1. ① 審査請求を再調査請求の選択によるもの
  2. ② 当初再調査請求を選択し、その決定に尚不服がある場合のもの
  3. ③ 再調査請求後3月経過してもその決定がない場合に、再調査決定を待たずして行うもの
  4. ④ 「合意によるみなす審査請求」
  5. ⑤ 「他の審査請求に伴うみなす審査請求」

などがある。

(1)審査請求

審査請求は、再調査請求を経ず直接行えるし、再調査請求をした場合でも、再調査請求について決定後処分に尚不服がある場合にも行える。
尚国税庁長官が行った処分に不服がある場合は、国税庁長官に対し審査請求を行う事になる。

(2)審査請求人等

審査請求は代理人を選任して行える(通107①)。
代理人は本人との契約に基付き、本人に代わり本人の名で自己の意思で行為をし、審査請求人の為に不服申立てに関する一切の行為をする事ができる。
しかし審査請求書取下げは、手続を終わらせる重大行為であるので、特別な委任がある場合でなければならない(通107②)。

(3)国税不服審判所における審理事務の流れ

審査請求書が国是税不服審判所に提出された後、国税不服審判所における一般的審理等の一連の手続として、答弁書要求、口頭意見陳述、反論書、証拠書類提出、担当審判官による質問、検査などがある。

個々の審査請求についての具体的審理手続の流れは、個々の事案により異なるが、それは後述する。
国税不服審判所長は、審査請求書受理後、当該審査請求書を原処分庁からの答弁書提出を求めると共に、審査請求人や参加人に反論書、意見書の提出を促す。
又これら主張書面の他、必要に応じ主張の裏付けとなる証拠書類等が提出され、担当審判官はこれらに基付き、又必要に応じ意見聴取を行い、争点や証拠を整理、どの様な手続きをいつ行うかといった審理計画を立て、それに沿った口頭意見陳述、物件提出要件などの手続を行う。必要な審理を終えたと判断した時は、担当審理官はその審理手続を集結し、担当審判官及び参加審判官により議決を行い、その議決に基付き裁決を行う。

2.審査請求書

審査請求は下記事項を記載の「審査請求書」を正副2通提出して行う(通87①、通令32)。

又この「審査請求書」には、これら事項の他、次の場合においては当該各事項を記載せねばならない(通87②)。

(1)審査請求にかかる処分内容

審査請求対象である処分特定の為に、審査請求にかかる処分内容を記載せねばならない。具体的には処分庁、処分の日付、処分の名称等の他、審査請求人が処分の相手方以外の者である場合には、処分の相手方の氏名又は名称を記載し、その処分について再調査決定による一部取消し又は変更がある時はその旨記載する。

再調査決定に不服がある場合であれ、審査請求できるのは、「再調査決定を受けた後の原処分」であり、最長審理庁の再調査審理処分そのものについての審理請求は認められず、飽く迄審査請求対象となる処分は原処分である。

(2)処分があった事を知った日等

国税不服審判所長が、審査請求が適法な期間になされたかどうかっを利用する為に、審査請求書に審査請求期間の始期に当たる日を記載する(通87①ニ)。その記載すべき日は下記の通り。

(3)審査請求の趣旨及び理由

審査請求書は、審査請求の趣旨及び理由を記載せねばならない(通87①三)。
審査請求の趣旨は、処分の取消し又は変更を求める範囲を明らかにする様記載せねばならないというものであり、その趣旨を主張する根拠として、例えば既に書面で通知されている更正処分の理由に対する審査請求人の主張を明らかにする必要がある。

(4)その他の記載事項

  1. 審査請求の年月日、審査請求人及びその代理人又は総代の住所、氏名及び番号を記載し、これらの者が押印せねばならない。
  2. 再調査請求後3月以内に再調査決定がない為、再調査決定を経ずに審査請求をする場合には、その再調査請求した年月日を記載せねばならない。
  3. 再調査決定を経ずに審査請求をする場合には、その再調査決定を経ないで審査請求をする「正当な理由」を記載して、それが適法な審査請求である旨を明らかにする必要がある。
  4. 処分があった事を知った日から3月経過後に直接審査請求する場合、3月経過する正当な理由を記載し、それが適法な審査請求である旨を明らかにせねばならない。
  5. 再調査決定書謄本送達日から1月経過後に審査請求する場合、1月経過する正当な理由を記載し、それが適法な審査請求である旨明らかにせねばならない。
  6. 処分があった日から一年経過後に審査請求する場合、1年経過する正当な理由を記載し、それが適法な審査請求である旨明らかにせねばならない。

(5)その他の添付書類

  1. 計数資料等の添付
      審査請求人は、審査請求が課税標準などの計数的争いである場合は、その趣旨及び理由を計数的に説明する資料を添付する様努めなければならない(通令32①)。
  2. 審査請求書は正副2通(通令32②)
      e-Taxを利用して審査請求がされた場合は、正副2通提出されたものとみなされる(通令32④)。
  3. 代理人(総代)の権限を証する書面
      審査請求人が代理人により審査請求する場合、総代の権限を証する書面を添付する必要がある(通令32③)。

3.審査請求書の補正

審査請求書が提出された場合、国税不服審判所は先ずそ審査請求書が法律に定める記載事項等に従っているか否かを形式的に審査する。これを形式審査といい、審査請求書がこの形式要件を具備している時は、原処分庁からの答弁書の提出を待って、通則法94条以下の実質審査が行われ、形式要件を具備していなければ、その不備が補正可能であれば補正要求がなされ、補正が不可能であれば却下される。

国税不服審判署長は、審査請求書が通則法87条(審査請求書の記載事項等)又は124条(書類提出者の氏名、住所及び番号の記載等)の規定に違反している場合には、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべき事を求めねばならない。
尚審査請求書の記載事項の不備が軽微なものである時は、国税不服審判所長は職権で補正できる(通91①)。

補正方としては、通常の形式、職権、口頭とある。補正が求められた期間内に不備が補正された時は、初めから適法な審査請求がされたものとして取り扱われる。

4.審査手続を経ずにする却下裁決

(1)補正命令に応じない場合

審査請求書補正を求められた場合において、審査請求人が定められた期間内に不備を補正しない時は、国税不服審判所長は通則法92条の2(審理手続の計画的進行)から97条の4(審理手続の終結)迄に定める審理手続を経ず、同法98条1項(裁決)の規定に基付き、裁決で当該審査請求を却下できる(通92①)。

(2)不適法であって補正不可能である場合

審査請求が不適法であって補正不可能な事が明らかな時も、審理手続を経ず却下できる(通92②)。
ここにいう「不適法であって補正不可能な事が明らかな時」とは、下記の様な時をいう(不基通(審)92-2)。

5.審理手続の計画的進行

審査請求人、参加人及び原処分庁(以下審理関係人)並びに担当審判官には、簡易、迅速且つ公正な審理実現の為、その審理において相互に協すると共に、審理手続の計画的進行を図る責務が求められる(通92の2)。
ここにいう「計画的進行」とは、審理対象となる争点を明確にし、計画的な審理を進める事をいい、担当審判官は計画的進行を図り、又審理関係人はこれに協力する事が求められる。

・担当審判官の指定

国税不服審判所長は、審査請求にかかる事件調査及び審理を行わせる為、担当審判官1名及び参加審判官2名以上を指定する(通94①)。
担当審判官が指定されると実質審理が開始される。担当審判官の指定時期については、審理の迅速化の観点から、担当審判官が早期に調査審理に着手できる様整備されている。
尚担当審判官を指定した時っ破、遅滞なく審査請求人及び参加人にその氏名及び所属を通知せねばならない(通令33)。

・担当審判官の除斥事由

国税不服審判所において実質審理を行う担当審判官及び参加審判官について、除斥事由が規定されている。
具体的には国税不服審判所長が指定する担当審判官及び参加審判官は下記以外の者でなければならない(通94②)。

・担当審判官の役割

担当審判官や参加審判官は、争点に主眼を置き原処分が適法か否かを十分に議論し審理する。
その為担当審判官や参加審判官は、審査請求人及び原処分庁の其々の主張を審査請求書及び答弁書から整理し、審査請求人及び原処分庁双方から提出された証拠書類等の検討を行う他、自ら又は分担者と共に争点に関する事実確認に必要な調査を行う事もある。
又担当審判官及び参加審判官で構成する合議体の構成員全員が集まり、審査請求人及び原処分庁の主張や証拠書類等について、調査、審理を行う合議を開催し、十分な調査、審理を尽くした上で、裁決の基礎となる議決を行う。

7.原処分庁からの答弁書提出

審査請求書が提出されると、国税不服審判所長は原処分庁に対し、審査請求書の「副本」を送付し意見を求める。
原処分庁はこの求めに対応して原処分の適法性についての主張を記載した書類(答弁書)を正本1通と審査請求人及び参加人に送付すべき数に相当する副本を提出する。

答弁書とは、原処分庁が審査請求の趣旨及び理由に対応し、原処分庁の主張を記載した書面で、具体的には審査請求の趣旨に応じて如何なる種類の株式の裁決を求めているか明らかにすると共に、審査請求の理由により特定された事項に対して、原処分の適法性について具体的に記載する。
審査請求人はこれにより審査請求の主張に対する原処分庁の主張を知る事ができる。
答弁書に記載すべき原処分庁の主張については、審査請求の趣旨に対応して、如何なる態様の裁決を求めるかを明らかにすると共に、審査請求理由により特定された事項に対応し、原処分庁の主張を具体的に記載するものとする。
この場合、審査請求理由の内容及びその程度が再調査請求理由と同様であり、原処分庁の主張も再調査決定書に記載した決定理由と同様である時は、その決定理由を引用する方法により、その主張を記載しても差し支えない(不基通(国)43-1)。

8.請求人、参加人からの反論書、参加人意見書の提出

審査請求人は、原処分庁から送付された答弁書に対し、審査請求人の主張を記載した反論書を提出できる。
この場合担当審判官からその提出すべき相当の期間を定めた時は、その期間内に提出せねばならない(通95①)。
参加人は審査請求にかかる事件に関する意見を記載した書面(参加人意見書)を提出できる。この場合、担当審判官が参加人意見書を提出すべき相当の期間を定めた時は、参加人は、その期間内にこれを提出せねばならない(通95②)。
ここにいう「相当の期間」とは、反論書又は参加人意見書を作成するのに通常要する時間をいい、その期間は審査請求対象とされた処分内容や審査請求人又は参加人の事情などにおいて定められるもので(不基通(審)95-1)、通常の郵送等に必要な期間及び事案の難易等を考慮して定められると考えられる。

・反論書等の送付

担当審判官は、審査請求人から反論書の提出があった時は、これを参加人及び原処分庁に参加人意見書の提出があった時は、これを審査請求人及び原処分庁に其々送付せねばならない(通95③)。

・答弁書以外にも原処分庁から書面提出される場合

原処分庁は、この反論書に対し意見がある場合、意見書を提出できる。国税不服審判所は、原処分庁から意見書提出された際は、その写しを審査請求人に送付する。

9.口頭意見陳述

・口頭意見陳述申立て

審査請求人又は参加人の申立てがあった場合、担当審判官は当該申立てをした者に口頭で審査請求にかかる事件に関する意 見を述べる機会を与えねばならない(通95の2①)。
但しその申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与える事が困難であると認められる時はこの限りではない(通95の2③による84但書の準用)。
これを「口頭意見陳述」という。尚この口頭意見陳述は、審理関係人等の申立てを要件とするものであり、担当審判官が職権では行えない。具体的な口頭意見陳述に関する手続を下記に記していく。

・申立人の質問(発問権)

口頭意見陳述を申し立てた者は、担当審判官の許可を得て、審査請求にかかる事件に関し、原処分庁に対して質問できる(発問権)(通95の2②)。
この発問権は審査請求の審理対象である処分の違法又は不当判断の為に必要な事項に関しての質問は認められるが、それ以外の審理に不必要な質問は認められないと解される。
従って担当審判官は、例えば申立人の行う質問が審査請求にかかる事件に無関係の事項に渡る場合や既にされた質問の繰り返しに過ぎない場合その他の口頭意見陳述の円滑な遂行を阻害するおそれがある場合を除き、原則として通則法95の2第2項の規定による申立人の質問に対しては、原処分庁は回答に確認など要する事情がある場合を除き、口頭意見陳述の場において適切に回答する事が求められている(不基通(国)95の2-1)。
この発問権の規定は、対審的構造を採らない再調査請求における口頭意見陳述にはない規定だが、審査請求においては、審査請求人の発問権を担保する観点から、原処分庁の出席を前提として設けられている。

・審理関係人等の招集等

口頭意見陳述は、担当審判官が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせる事になる(通95の2③による84②の準用)。
この口頭意見陳述において、申立人は担当審判官の許可を得て、補佐人と共に出頭できる(通95の2③による84③の準用)。
口頭意見陳述において、担当審判官は、申立人のする陳述が事件に無関係な事項に渡る場合その他相当でない場合、これを制限できる(通95の2③による84⑤の準用)。
ここにいう補佐人とは、申立人に付き添って口頭意見陳述の期日に出頭し、その陳述を補佐する者をいい(不基通(審)95の2-5)、申立人から口頭意見陳述の際、補佐人を帯同したい旨の申請があった時は、担当審判官は速やかにその許否を決定する(不基通(審)95の2-6)。
又補佐人の帯同は、申立人が十分に意見陳述を行える様専門的知識をもってその意見陳述を補佐させる趣旨の制度であるから、担当審判官はこの趣旨に従い許否決定する。
尚許可を与えた場合にも必要に応じその許可を取り消す事もできる(不基通(審95の2-7)。

・口頭意見陳述における制限

再調査請求にかかる規定(通84⑤)同様、審査請求における口頭意見陳述においても下記の様規定が整備されている。

10.審査関係人からの証拠書類等の提出

・証拠

審査請求人又は参加人は、自己の主張を理由付け又は原処分庁等の主張を否定する証拠書類又は証拠物を提出できる(通96①)。
又原処分庁は、当該処分理由となる事実を証する書面その他の物件を提出できる(通96②)。
この場合において、担当審判官が証拠書類又は書類その他の物件を提出すべき相当の期間を定めた時は、その期間内にこれを提出せねばならない(通96③)。
尚証拠書類等が、相当の期間内に提出されない事から、担当審判官が更に一定の期間を示して証拠書類等の提出を求めたにもかかわらず、これに応じなかった時は、担当審判官は審理手続を集結できる(通97の4②一)。

・証拠の提出

自己の主張を裏付ける為の証拠書類等は、担当審判官宛に提出でき、この証拠書類等は、担当審判官が審理手続終結迄の間提出できるが、担当審判官が提出期間を定めた時は、その期間内に提出する事となる。

11.審理の為の質問、検査等

担当審判官等は、争点整理する為に必要があれば証拠書類等収集の為に質問、検査、帳簿書類等提出要求等を行う。
これを調査といい、又争点を中心として、事実関係、法律関係を明確にして検討する、これを審理という。

担当審判官は、審理を行う為に必要であれば審査請求人若しくは原処分庁の申立てにより、又は職権で調査を行う。
具体的には次に掲げる行為を調査して行う(通97①)。
又国税審判官、国税副審判官その他国税不服審判所の職員は、担当審判官の嘱託により、又はその命を受け、下記①、③の行為ができる(通97②)。

参考迄に国税不服審判所の職員、原処分庁の職員が行う調査目的は其々異なる。
担当審判官など国税不服審判所の職員が行う調査は、原処分が適法か否か審理する為に行い、原処分庁の職員が原処分に先んじて行った調査は、納税者の申告内容を帳簿などで確認、申告内容に誤りがあれば是正を求めるものである。

もう一点。各税法に関する調査にかかる質問検査権に関する規定は、其々の国税に関する質問検査権についての一般的規定であり、通則法97条の調査権限は、審査請求事件の審理における特別規定である。
従って通則法74条の2の規定は、国税不服審判所の職員には適用されない。

・原処分庁等からの申立て

担当審判官の職権調査については、これ審査請求人又は参加人の申立てにより、又は職権で質問、検査等の行為ができるとされていたが、平成26年6月の改正で、原処分庁も申立てができるとされた(通97①)これは原処分庁にも証拠書類等の閲覧等の請求ができる事を明文化(通97の3①)するのと同様、より当事者間の審理の公平確保等の観点から、審理関係人(当事者)たる原処分庁にも担当審理官等による職権調査を求める事ができる様整備する事とされたものである。

・調査に応じない場合の対応

国税不服審判所長は、審査請求人等が正当な理由なく、質問、提出要求又は検査に応じない為、その主張の基礎を明らかにする事が著しく困難となった場合には、その部分にかかる主張を採用しない事ができる(通97④)。

12.審理手続の計画的遂行

・審理関係者の招集等

担当審判官は、審査請求にかかる事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜しているなど事件が複雑である事その他の事情により、迅速且つ公正な審理を行う為、通則法95条の2(口頭意見陳述)から97条1項(審理の為の質問、検査等)迄に定める審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合、期日及び場所を指定して、審理関係人を招集し、予めこれらの審理手続の申立てに関する意見の聴衆を行える(通97の2①、不基通(審)97の2-1)。
尚審理関係人が遠隔の地に居住している場合その他相当と認める場合には、電話等(通話者及び通話先場所を確認した所により、音声の送受信により通信できる方法)により、意見の聴衆が行える(通97の2②、通令35)。
ここにいう「その他相当と認める場合」とは、電話による意思聴衆する事が適切と担当審理官が認める上記以外の場合をいい、例えば、遠隔の地ではない場合であっても審理関係人が出頭を望まない場合や、担当審判官が審査請求人若しくは参加人又は原処分庁と一対一で通話する事により目的達成できる場合がこれに当たる。
又「審理手続の計画的遂行が必要であると認められる場合」とは、例えば下記の様な事件で、審理手続に要する期間が長きに渡る事が見込まれる場合をいう(不基通(審)97の2-1)。

  1. 争点が多数
  2. 事実関係が錯綜
  3. 審理関係人から提出された証拠書類等が膨大
  4. 証拠又は資料の収集やその検査に時間を要する

・審理手続の終結の予定時期の決定

担当審判官は、上記意見聴取を行った時は、遅滞なく審理手続の期日及び場所並びに審理手続の終結の予定時期を決定し、審理関係人に通知する事とされている(通97の2③)。
尚審理手続終結予定時期は飽く迄 「予定」であるから、当該予定時期に審理手続を終結せねばならない義務が担当審判官に課せられる訳ではない。

・進行状況予定表

担当審判官は、審査請求人と連絡又は面談後、審理状況に応じて適時に「審理状況、予定表」を送付し、審査請求の進行状況等をお知らせするとしている。
「審理状況、予定表」には、答弁書などの書類提出状況、その時点での争点、調査、審理の状況、今後の予定等記載しており、これにより審査請求人は審査請求の進行状況等を確認できる。
尚「審理状況、予定表」は、審査請求内容、調査、審理の状況等により送付しない事もあるが、その場合には電話等で審査請求進行状況等を説明するとしている。

13.審理関係人による物件の閲覧等

(1)証拠書類等の閲覧等

審理関係人は、審理手続終結等迄の間、担当審判官に対し、通則法96条1、2項(証拠書類等の提出)又は97条1項2号(審理の為の質問、検査等)の規定により提出された書類その他の物件の内覧(電磁的記録にあっては、記録された事項を財務省令で定める所により表示したものの内覧)又は当該書類の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求める事ができる。この場合において担当審判官は、第三者の利益を害するおそれがあると認める時、その他正当な理由がある時でなければ、その閲覧又は交付を拒否できない(通97の3①)。又担当審判官は上記閲覧について、日時及び場所を指定できる(通97の3③)。
ここにいう「審理手続終結迄の間」とは、通則法94条1項(担当審判官等の指定)の規定により担当審判官が指定された時から同法97条の4第1、2項(審理手続の終結)の指定により審理手続を終結した時迄をいう(不基通(審)97の3-1)。又「第三者の利益を害するおそれがあると認める時」とは例えば、通則法97条の3第1項の規定による閲覧又は交付を求める者以外の者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する時をいい、又同項「その他正当な理由がある時」とは、例えば国の機関、地方公共団体等が行う事務又は事業に関する情報で、閲覧又は交付対象とする事により、当該事務又は事業の性質上、それらの適正な遂行に支障を来たすおそれがある時をいう(不基通(審)97の3-2)。
「合議」とは合議体構成員全体が集まり、審査請求人及び原処分庁の主張や証拠書類等について調査、 審理を行う検討の場で、合議体は審理を尽くす為に、当初合議や最終合議など数回に渡り合議を行い、適時に合議を行った後、裁決の基礎となる議決を行う。

・原処分庁の閲覧請求権

審理手続透明性向上と共に、当事者間の審理の公平確保の観点から、審査請求人と参加人に限らず原処分庁においても担当審判官に提出された書類その他の物件の閲覧又は当該書類の写し等の交付を請求できる事が確認的に規定されている(通97の3①)。
因みにこの規定は、原処分庁からの担当審判官による職権調査申立て(通97①)同様、行政不服審査法に準拠するものではなく、通則法独自のものである。

・担当審判官が所持する証拠書類等

原処分庁を含む審理関係人が担当審判官に対し、担当審判官が所持する証拠書類等(職権収取資料を含む(通97①ニ))の閲覧又は写し等の交付を求める事ができるとされている。

(2)閲覧、写しの交付請求権

・書類提出人の意見聴取

担当審判官は、前述(1)の閲覧をさせ、又は交付しようとする時は、当該閲覧又は交付にかかる書類その他の物件の提出人の意見を聴かねばならない。但し担当審判官がその必要なしと認める時はこの限りではない(通97の3②)。
これは担当審判官が閲覧をさせ、又は写し等の交付をしようとする時は、その閲覧等の可否について適切に判断可能にする為、物件の提出人の意見を聴くのだとされる。

14.審理手続の終結

・審理手続を終結する場合

担当審判官は必要な審理を終えたと認める時は、審理手続を終結する(通97の4①)。「必要な審理を終えたと認める時」とは担当審判官及び参加審判官が当該審査請求にかかる事件の調査及び審理を行い、合議により当該審査請求にかかる事件について議決するに熟したと判断しいた時をいう。
尚担当審判官は、審理関係人から審理手続を終結する事を求められたとしても、これに応じる義務はない(不基通(審)97の4-1)。

・審理手続を終結できる場合

担当審判官は、次の何れかに該当する時は、審理手続を終結できる(通97の4②)。

・審理手続終結の通知

担当審判官が上記により審理手続を終結した時は、速やかに審理関係人に対し、審理手続終結の旨書面にて通知するものとされている(通97の4③、不基通(審)97の4-3)。

・審理手続終結の効果

参考迄に通則法97条の4の規定により、審理手続を終結した後でも、裁決後に例えば次に掲げる事由が生じた際は、担当審判官が審理手続を再開する。
再開した時は速やかに審理関係人に対し、審理手続再開の旨書面にて通知する。尚担当審判官は、審理関係人から再開を求められたとしても応ずる義務はない(不基通(審)97の4-4)。

  1. ① 通則法104条1項(併合審理等)の規定により審理手続を併合
  2. ② 国税不服審判所長が主張、証拠等を補充する必要があると認めた

・議決

「議決」とは、担当審判官及び参加審判官の過半数意見により決定された結論をいい、国税不服審判所長は、審理手続を経ないでする却下裁決以外の「裁決」をしようとする時は、担当審判官及び参加審判官の議決に基付いてこれをせねばならない(通98④)。

15.国税不服審判所の法令解釈

国税不服審判所長は、国税庁長官の発した法令解釈通達に拘束されず独自の法令解釈により審査請求裁決ができる。
しかし裁決機関の解釈と執行機関の解釈が異なる場合は、意見調整を図るとしている。

・国税庁長官への通知(図①通知)

国税審判所長は

  1. ① 国税庁長官が発した通達に示されない法令解釈と異なる解釈により裁決する時
  2. ② 他の国税にかかる処分を行う際における法令解釈の重要な先例となると認める裁決をする時

は、予めその意見を国税庁長官に通知せねばならない(通99①)。
「重要な先例となる」とは、法令解釈に関する国税庁長官通達が存在しない場合であり、裁決で採用しようとする法令解釈が他の処分を行う際における重要な先例となると認められる時をいう(不基通(審)99-1)。

参考迄に、法令解釈に関する国税庁長官通達は、税務職員の税務行政執行に当たっての法令解釈、適用の統一的基準とする為、可能な限り具体的に定められている。
しかし、社会、経済状況の複雑化と急激な変化に鑑みれば、長官通達が納税者の実情に合わなくなる。
国税不服審判所長が長官通達に示される法令解釈と異なる解釈により裁決しようとする時は主にこの様な場面であろう。
国税不服審判所長は、法令解釈に当たっては法令文理解釈の他、その規定の趣旨、法令の目的に照らし結果の妥当性を検討しながら判断、決定せねばならない。
因みに「法令解釈の重要な先例」であるが、判例、学説、通達、慣行等が未だ確定していない法令の規定について国税 不服審判所長がする新たな解釈で、その解釈が後に解釈の前例となるものをいう。
又「重要」とは、他の処分を行う際にその解釈が重要な先例となるという意味であり、その事件の税額の多寡や内容の複雑さなどとは無関係である。

・国税庁長官と国税不服審判所長による諮問(図②諮問)

国税庁長官は、前述の通知があった場合において、国税不服審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり、且つ国税庁長官が当該意見を相当と認める場合を除き、国税不服審判所長と共同して当該意見について国税審議会に諮問しなければならない(通99②)。
国税審議会は、国税庁長官が国税不服審判所長の意見を相当と認めない時などに、国税庁長官及び国税不服審判所長からの意見を求められた事項について調査、審議して議決する機関で、財務省設置法21条に基付き、国税庁に国税審議会が置かれている。

・国税審議会の議決に基付く裁決(図③答申④裁決)

国税不服審判所長は、上記により国税庁長官と共同して国税審議会に諮問した場合、民意を反映した第三者機関である当該国税審議会の議決に基付いて裁決しなければならない(通99③)。

16.裁決

審査請求の裁決は「裁決書」により行われ、又その記載内容は主文、事案の概要、審理関係人の主張要旨理由からなる(通101①)。

(1)裁決書

裁決は審査請求についての国税不服審判所長の判断を示すもので、又行政内部における最終判断でもある事から、裁決に不服がある納税者は裁判所で争う事になるが、原処分庁は仮に裁決に不服があっても訴訟を提起する事できない(裁決の拘束力)(通102①)。
尚通則法84条8項(決定の手続等)の規定、つまり再調査請求にかかる処分の全部又は一部を維持する場合におけるその維持される処分を正当とする理由の明示については、上記裁決に準用され、その理由を明示する必要がある(通101②)。
 
参考迄に裁決書の記載事項を記しておく。

もう一点。原処分を取り消し又は変更する採決があれば、その裁決自体の効力により、違法又は不当であった原処分は当然取消され又は変更される。
しかしその後再び原処分庁が裁決で取り消された処分と同様の処分ができるとなれば、権利救済の目的を達せない事になる。
そこで通則法102条1項において「裁決は関係行政庁を拘束する」と規定し、その様な誤りがない様にしている。従ってこの裁決の拘束力は、棄却及び却下の裁決については生じない(不基通(国)102-2(注))。

更にもう一点。理由附記の不備は、決定固有の違法として、右決定の取消原因となるべき瑕疵に当たるものと解すべきであり、後にされた裁決における理由附記により治癒されるものではなく、異議申立人が原処分(異議決定)における理由附記不備の瑕疵を主張して、その取消しを求める訴えの利益を失われるものではないとされている(最高判昭和49.7.19)。

(2)裁決の種類と内容

国税不服審判所長は、合議体の行った議決に基付いて、審査請求の全部又は一部を認める時は原処分庁の全部若しくは一部の「取消し」又は「変更」を行い、審査請求人の不利益となる様な裁決はできないとされている(通98②③)。

(3)裁決書の送達

裁決は、審査請求人に裁決書の謄本が送達された時にその効力が生じる。
尚当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における通則法98条3項(裁決)の規定による裁決にあっては、審査請求人及び処分の相手方に裁決書の謄本が送達された時にその効力を生じる(通101③)。
又国税不服審判所長は、裁決書の謄本を参加人及び原処分庁(通則法75条2項(1項にかかる部分に限る)に規定する処分にかかる審査請求にあっては、当該処分にかかる税務署長を含む)に送付せねばならない(通101④)。