国税通則法国税通則法における不服審査及び訴訟 其の一 行政訴訟制度の概要

1.納税者権利救済制度の概要

納税者が税務署長等の行った国税にかかる更正、決定、滞納処分や各税法に規定される各種申請(酒販免許申請、青色申請、物納申請など)に対する処分について不服がある場合、納税者は国(ここでは処分をした税務署長等)に対し、更正処分等取消しや申請に対する処分取消しを求める事が認められている。
この様な国の処分に対し救済を求める手続を一般に行政訴訟制度と称されている。
行政訴訟制度には、行政庁に対し救済を求める「不服審査(行政救済)」と裁判により救済を求める「訴訟(司法救済)」とがあり、行政訴訟の内租税法律関係に関する訴訟は「租税訴訟」又は「税務訴訟」と呼ばれている。

2.行政訴訟(租税訴訟)の目的

訴訟を含めた広義の行政訴訟制度には、下記2つの異なる目的があるとされる。

しかしながら、行政処分が違法又は不当であると不服を唱える者の権利利益救済を図るというのは、これを行政庁側からみれば、誤って成された行政を是正するという事に他ならない。
言わば2つの目的を持つといっても、1つの目的を異なった面から目指したものと言える。

3.租税訴訟案件にかかる行政救済の必要性

納税者の権利利益救済という見地からみれば、裁判所が行う司法救済が、下記の理由から最も整備された形態であると言える。

しかしながら、訴訟はその手続が慎重である故、迅速な処理が期待できない。又租税を巡る争訟の大部分は司法救済の対象としいて必ずしも適さない簡易少額事案で占められている。
この様な問
題解決の為にも、訴訟の前置的な権利利益救済手続としての不服審査(行政救済)制度は重要な意義を持つ。
以上を踏まえ、下記に租税訴訟案件における行政救済必要性をまとめる。

4.租税争訟案件における行政救済の特色

租税争訟案件における不服審査は、通則法において訴訟による司法救済を求める前に、原則として「審査請求」についての裁決を経ねばならないという「不服申立前置主義」が全面的に採用されており(通115①)、直球起訴ができるのは無効確認を求める訴えなど例外的なものに限られる。

租税訴訟において適用される法令について2段階に分けて記す。

イ.不服申立て段階

行政庁の処分についての不服申立ては、一般法である行政不服審査法が適用される。
しかしながら通則法80条1条1項は「国税に関する法律に基付く処分に対する不服申立てついては、この節その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定める所による」と規定し、その他にも不服申立てに関係するものとして、徴収法(第8章)その他個別税法(相続税法附則3但書)の規定もある。

この為国税に関する法律に基付く処分についての不服申立てについては、特別法優先の建前から、先ず通則法を除く個別税法が適用され、同節に定めがないものについて一般法である行政不服審査法が適用される事になる。
しかし通則法は略自足的に規定しており、行政不服審査法の規定が適用される場合は極々限られる。

この様に国税に関する法律に基付く処分についての不服申立てを通則法に定める事としたのは、国税に関する処分が大量的且つ集中的に、然も回帰的に成される事など、他の行政分野にはない特集性があるからである。

ロ.訴訟段階

国税に関する法律に基付く処分にかかる訴訟においては、通則法(第8章2節)及び他の国税 に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法その他の一般の行政訴訟に関する法律の定めによる事とされている(通114)。
しかし通則法は訴訟について、不服申立前置等(通115)及び原告が成すべき証拠の申出(通116)などの規定があるのみである。一方行政事件訴訟に関し、行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟の例による(行政7)とされている。
しかし行政訴訟法に定めのある事項は僅かなので、その具体的手続等は殆ど民事訴訟に関する法令が適用される。