国税通則法国税通則法における国税調査(税務調査手続) 税務調査の事前通知

調査手続の透明性、納税者の予見可能性を高める観点から、税務調査に先立ち、課税庁は原則、事前通知を行う事としている(通74の9)。

1.税務調査の透明性

事前通知においては上記の通りだが、その一方で悪質な納税者の課税逃れを助長するなど調査適正遂行に支障を来たす事なき様、課税公平確保の観点を踏まえ、一定の場合には事前通知は行わないとされる(通74の10)。

参考迄に質問検査範囲等についての裁判例(最三決昭和48.7.10刑集27巻7号1205頁)があるので記しておく。

質問検査範囲等の具体的手続について「所得税法234条1項の規定は、国税庁、国税局又は税務署の」調査権限を有する職員において、当該調査目的、調査すべき事項、申請、申告体裁内容、帳簿等記入保存状況、相手方の事業形態等諸般の具体的事情に鑑み、客観的必要性があると判断される場合は、前職職権調査一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認めた趣旨であり、この場合の質問検査範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施細目については、右に質問検査権の必要があり、且つこれと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的選択に委ねられているものと解す」べきであり、「実施の日時場所の事前通知、調査理由及び必要性の個別的、具体的告知の如きも、質問検査を行う上の法律上一律要件とされているものではない」とされてきた所である。

(1)事前通知の概要

(2)事前通知の対象者

事前通知対象者は当然の事ながら納税義務者で、又当該納税義務者に税務代理人がある場合、当該税務代理人も対象となる(通74の9①)。

税務代理人がある場合において当該納税義務者の同意がある一定の場合に該当する時は、当該納税義務者への調査事前通知は、当該税務代理人にすれば足りる(通74の9⑤)。
同意がある一定の場合とは、税務代理権限証書に当該納税義務者への調査事前通知は代理人に対しすれば足りる旨の記載がある場合とされている(通規11の3)。

(3)対象となる調査の範囲

事前通知対象となる調査は「実施調査」とされる(通74の9①)。
具体的には、納税義務者の事業所、事務等に臨場して行う調査が該当する事となる。尚この調査には、更正決定等を目的とする調査の他、再調査決定や申請等審査の為に行う調査も含まれる(調査手続通達4-1)。

因みに事前通知対象には、納税義務者の取引先等に対する「反面調査」は含まれないと考えられるが、「反面調査」実施に当たっては、その必要性と反面調査先への事前連絡の適否を十分検討する必要があるとされている。

(4)事前通知の内容

納税義務者に対し実地調査を行わせる場合には、予め当該義務者にその旨及び下記事項を通知する(通74の9①、通令30の4)。

2.調査の「開始日時」又は「開始場所」の変更の協議

事前通知の際、設定された調査開始日時等について、納税義務者から合理的理由を付して調査の「開始日時」又は「開始場所」について変更したい旨の要請があった場合は、税務署長等は協議する様努める事とされている(通74の9②)。

3.通知事項以外の事項について非違が疑われる場合の質問検査等

一旦調査事前通知が成された場合でも、その通知に含まれていなかった前述1、(4)④~⑦迄の事項(通知した調査対象期間外の期間や調査対象物件外の物件等)について調査着手後、非違が疑われる事となった場合、当該事項に関して税務職員が質問検査等を行う事を妨げるものではないとされる(通74の9④前段)。
これは「通知事項以外の事項」に関し、非違が疑われる場合には、改めて事前通知を行う事なしに(通74の9④後段)、当該事項についても質問検査権等を行える事について確認的に規定されたものである。

4.事前通知を要しない場合(例外事由)

税務署長等は、調査相手方である納税義務者の
①申告内容
②過去の調査結果内容
③営む事業内容に関する情報
④その他国税庁等若しくは税関が保有する情報
に鑑み、違法又は不当行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しないとされている(通74の10)。